コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

▼ ( No.1 )
日時: 2014/02/03 22:07
名前: 御子柴 ◆InzVIXj7Ds (ID: qNIh9ax1)





 冬。動きたくない季節。何故かって、寒いから。

 私と男友達の真二は真昼間から家で飲んでいた。
 数時間が経ち、買っていたお酒やおつまみが切れてしまったので、どちらが買いに行くか話し合っていた。因みに“二人で一緒に行く”という案は一切無い。何故かって勿論寒いから。
 最初はグー ジャンケン ポン の掛け声で勝負は始まった。
 結果は真二のグー負け。

「くっそー! 負けたああ! 男は黙ってグーだろ!」
「負けたけどね」
「おうおう、買ってこりゃあいいんだろぉ、買ってこりゃあ。酒とつまみしか買わんねーかんな!」
「はい、いってらしゃい」

 負けた真二は「寒い寒い」なんて言いながら薄着で出て行った。言葉と一致していない。
 勝った私は温かいこたつでぬくぬくと温まる。気持ち良くて寝ちゃいそうだ。


▽ ▲


「おーう、買ってきたぞ。あぁ寒ぃさみー」

 数十分後、真二がコンビニから帰ってきた。
 薄着で行くからよ。鼻まで赤くしちゃって、時季外れのトナカイみたい。
 本気で寒かったのか、真二はすぐにこたつへ入った。冷気でこたつの中の温度が下がった気が。

「ありがとー。何買ってきたの?」
「酒、チーズ、塩辛とか色々買ってきた」

 買った袋を受け取り、中身を見る。最初お酒とつまみしか買わないって言ってたのに、チョコやスナック菓子まで買ってる。……普段は買わないお洒落なファッション誌まで。

「ねぇ、これ……」
「まぁいいじゃねえか。飲もうぜ」

 真二はそそくさと缶ビールを開ける。話逸らしたね。と言うよりお洒落に興味があった事にビックリよ。
 私も青リンゴ味の缶チューハイを開ける。プシュ、と良い音とリンゴの甘い香りがした。

「カンパーイ」
「カンパーイ」

 乾杯をし、美味しそうにグビグビと飲む真二。
 そんな飲み姿を横目で見ながら飲んでいると、真二が「飲むか?」とビールを差し出してきた。それを受け取ると、真二は塩辛のパックを手に持った。
 実はと言うと私、お酒が飲めるようになってから数年は経つけど、ビールは飲んだ事が無い。よく分からない小さな勇気を振り絞って未知のビールをゴクッと一口飲む。何とも言えない、苦い味がした。……これは私には合わないわ。
 苦虫を噛み潰した様な顔をしていると、「無理っぽい?」と笑いながら真二が言ってきた。

「うーん……、苦いね」
「まだまだお子ちゃまってことだな」

 何勝ち誇った顔で言ってるの。反論しようと口を開きかけたら、先に真二が言葉を発した。

「これって間接キスじゃね?」

 思わず吹きそうになった。何を行き成り言い出すのよこの男は。
 それより、さっきから頑張っても開かない塩辛に集中しなさいよ。

「な、何言ってるの、行き成り。吹きそうになったじゃないの」
「いや、何となく言っただけだけど……」
「な、何?」

 開きかけの塩辛を置き、私の方を向く真二。顔は普段通りおちゃらけているけど、真剣な眼差し。
 普段見ない眼差しに、動揺している自分がいる。

「間接より、直接の方が良くね?」

 えーっと……。

「よ、酔ってるの?」
「酔ってねぇよ。マジだ」

 嘘だ、その言葉が放たれる事は無かった。

「で、キスして良いか?」
「……今したじゃない、ばか」

 不意打ちのキスに顔が熱くなるのが分かる。
 絶対今、顔真っ赤だ。

「馬鹿ってお前。それで、返答は?」
「う、ん。良い、よ……んぅ……っ」

 言葉を言い切る前に、またキスをされた。
 それはさっきの軽いキスではなく、深い深いキスだった。


 (リンゴ甘ぇな)
 (……ばか)



 ■ 間接より





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直接の方が良い。


少しリメイク。
今の時期に合って良かった。

(2014.2.3 修正)




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