コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

▼ ( No.8 )
日時: 2014/02/03 22:09
名前: 御子柴 ◆InzVIXj7Ds (ID: qNIh9ax1)





「裕樹、重いよ」
「あぁ〜? 良いじゃねぇかよ」

 休みの日に私と彼氏の裕樹二人で図書館に来ていた。休日というのに館内に居る人は少なく疎らだ。本棚に囲まれていて丁度死角になっている、一つの小さな空間みたいな場所で一人で立ち読みしていると、急に背中が重くなった。振り返ると、そこには別の場所で読んでいた裕樹が後ろから抱き着いていた。いつから後ろに居たのだろう。読み耽っていて全く気が付かなかった。

「良くないよっ。大体ここ図書館だよ? 皆に見られるって……」
「そんなもん見せつけてやれば良いんだよ」

 裕樹は耳元で囁き、その低い掠れ気味の声が全身に響き渡る。
 私は裕樹の声に弱い。それを知っているのか、わざと耳元で囁いたのだろう。そして離れるどころか強く抱き締めた。

「ゆ、裕樹っ!」
「しっ、大声出したら人にバレるだろ」
「だって……って、さっき見せつけてやれば良いって言ってたじゃん、あっ……」

 しまった。うっかり口を滑らしてしまったその言葉を、裕樹が聞き逃すこともなく。
 裕樹は意地悪そうな笑みを浮かべた。

「ふーん、芽衣はそんなに見せつけたいんだな?」
「そっそんな訳ないよ!」
「まぁ良いけどよ。……なんて言うとでも思ったか」
「わっ!」

 解放してくれると思ったその時、裕樹は器用に私を自分の腕の中に閉じ込めた。向かい合わせで胸の鼓動が伝わりそう。
 私は裕樹の胸をトントンと叩く。

「ゆっ、裕樹っちょっと!」
「うるせぇよ。マジでバレるぞ」

 離す気配もなく、裕樹は更に強く抱き締める。けど痛くならないように手加減している所が彼なりの小さな優しさ。
 私は諦めて抵抗することを止めた。裕樹は無言になり、私を暫く抱き締めていた。

 しかし今日はやけにくっ付いてくる。どうしたんだろう。
 「どうしたの」と訊こうとした時、裕樹が口を開いた。

「……お前さぁ、本ばっか読んでんじゃねえよ」
「へ?」

 突然そんな事を言ったので、私は間抜けな声を出してしまった。
 そういえば、今日は課題を終わらせる為に朝からずっと図書館に籠りっぱなしだった。裕樹を放ったらかしにして。

「……裕樹、もしかして私が本ばかり読んでたから今日一日中寂しかった……とか?」
「なっ! ち、違ぇよ!」

 否定する裕樹。けれど顔が真っ赤で、説得力が微塵も無い。そんな大声出してバレるでしょ。

「図星でしょー。顔真っ赤ですよ? 裕樹君」

 もしかして形勢逆転? と思っていたのも束の間。真っ赤になった顔がさっきの顔よりももっと意地悪な笑みになった。嫌な予感がする。本能的にそう思った。

「お前、自分の立場解ってんだろな? 今ここは俺達しか居ねえって事をよお」
「えっ、ど、どういう意味……わあっ!?」

「これはお仕置きが必要だな……」



■ 誰も居ない図書館の一角で





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お仕置きという名の×××。


図書館で何やってんだあんたら。

(2014.2.3 修正)




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