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Re: 世界も涙も帰宅部も<シンデレラ開幕> ( No.174 )
日時: 2014/12/01 22:54
名前: 栗おこわ (ID: nFRCnKe8)

第100話 始めの一歩

大きな拍手の中に現れる皆は、ガッチガチだ。

俺は、まだ出番じゃないから、緊張からくる腹痛と戦う。

舞台裏でも、劇の内容はもちろん分かる。だから、アリーメさんの最初の言葉も聞き逃すことなく聞こえた。

oooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo

「あ……あの…」
アリーメ…シンデレラが途切れ途切れに言葉を発する相手は、食卓を囲む女性達だった。

そして観客は、アリーメさんの姿に「ほうっ」と息をついた。
それもそのはず、ぼろぼろの雑巾の様な服を纏っている少女は、銀髪・青い眼・人形のような整った顔だからだ。
そんな服を着ていても、バツグンの存在感だ。


「なあに?床掃除、終わったのかしら?」
「お母さん、シンデレラ、疲れたんじゃないの?」
お母さんと呼ばれた、一番派手な服を身にまとう西野…女性は、娘と思われる2人の女性に「そうね」と言い、シンデレラの方に身体を向けた。
「シンデレラ、疲れたのならトイレ掃除でもやってなさい。それか、楽なアイロンかけでもやりなさい。手を止めるんじゃないのよ?」
冷たく言い放つ女性にシンデレラは言葉を失う。
「お母さん、冷酷すぎるよお。ねえ?あ、ねえ、シンデレラ。私の部屋掃除してくれる?こっちのが楽だと思うし!」
「じゃあ私の部屋も。まあ、モモエよりかはキレイだから安心しなさいよ」
うふふ、と二人の娘が笑う。

シンデレラは、俯きながら小さく頷いた。


ガラガラと一旦幕が下がり、程なくして幕は上がった。


「まあ!王子様の花嫁決めの舞踏会!?」
「「本当!!?私、行きたいわ!!」」

第2幕は、3人の大きな声で始まった。
皆、口を大きく開いて大袈裟なほどに驚き、同時に歓喜している。

「今日じゃないの。ドレスを早く着て、二人共!他より早く行くのよ!」
「「はあい!」」

「ああ、シンデレラ」
るんるんとした空気が母の一言で一変し、氷のように冷たくなった。
「な、なんでしょうカ」
シンデレラがきまずそうに尋ねる。
「窓拭きと、玄関掃除に食器洗い、頼んだわよ。あ、晩御飯はいつもの場所にあるから。今日は分かってるかと思うけど遅くなるから、先に寝ていなさい」
「ハイ」
こくりと頷くシンデレラを見て、母は大きく頷き、娘達を連れて外(ステージ外)に出た。



夜。
シンデレラは、窓の外を眺めていた。
そこからは城が見え、明るくライトアップされてい、賑やかだった。
「いいなあ…わたしも、行きたかった」
窓を拭く手を止め、震える肩を止めるように、自分を抱きしめた。
「こんな服じゃ外にも出たくない。もういやだ。楽しいコトもなにもない。嫌…嫌…」
そのまま、ずるずると壁をつたい、コトンと頭を床につけ、うずくまる。

              つづく