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Re: あさくんそこそこかっこいいんだから ( No.177 )
日時: 2014/12/14 13:57
名前: 栗おこわ (ID: CkThpPJM)

第103話 そっとゆっくり

妖精が裏幕に姿を消すと、またもステージが暗転した。

観客は、今度は驚くことも無く暗くなったステージを見守った。
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城の中はとてつもなく広く、果てがないんじゃないかと思ってしまうほどだ。
シンデレラは、物語の世界のような城内に呆気をとられていた。

「危ないわね、あなた。突っ立ってないで…」
声をかけられ、反射で振り向く。

「「!!」」

相手はなんと…モモエ、と呼ばれた姉だった。


「シンデレラ…!?なんでここに…」
唖然とするモモエに、言い訳をする言葉も見つからず、ただただ慌てるシンデレラ。
「そのドレス…まさか、盗んだんじゃないでしょうね!!」
「ち、違います!…った、たまたま安売りしていて」
苦し紛れの嘘だったが、逆に本当のことを言うよりかは信じてくれるだろう。
「い、今まで貯めてきたお金で…」
「家のことはしたの?」
「は…い」
怪しそうにシンデレラを見つめるモモエの重圧に押しつぶされそうになる。
ごくりと唾を飲み込み、冷や汗が額に浮かぶ。



…するといきなり、周りの女性たちが黄色い声で叫びだした。

二人も気づき、女性たちの声の向く方向に視線をやった。


「王子様…」

シンデレラもモモエも息を飲んだ。

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裏幕
「ぶっ…ぶふーーーーっ!!!!!!あはっはははっは」
「ダーーっはっはっはああ!!!」

男子が爆笑、女子は笑っていた。

「あっ朝日がっ…黄色い声っwwwwww」
「ごめんあさくん耐えらんない…」
美濃さんまでもが笑っている。
「配役、間違えたかなあ…くくく…」
音縁さんも過ちを悔やみながらも笑っている。
しかも本人はマジメに演技しているからそれも皆のツボを刺激している。

「ま、まあ、ここは「残念イケメン」で乗り切りましょう…」
「イケメンなの、あれ」
誰かが正論を音縁さんにズバッと言い放つ。慌てて美濃さんが
「ジャニーズ顔っぽいよね、あさくんって。ね、悠馬くん!」
「俺え!!?」
いや…そんな必死に同意を求められても…。ジャニーズ顔なのかあれ。ジャニヲタさんに失礼なのでは。
「ね、ねえ!?」
美濃さんの呼びかけに、必死で頭の中であさを2割増しにさせて
「うんうん、ジャニーズにいそう」
嘘は、いけませんよ、皆さん…
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王子は、一般の人々の中に立っていた。が、オーラが違う。きっとどこにいても気づけるだろう。
「王子様よ、モモエ!」
どこからか、あの厳しい母の声が聞こえる。モモエも気づいたのか、ハッとして身だしなみを整えた。

どうやらこの舞踏会は「王子の婚約者決め」も伴っているらしく、一般の女性の中に姫もいるらしい。

だから、母も姉たちもあんなに張り切っていたのか、と今更になって気づく。
「ということは、私、すごく邪魔者…」
王子と婚約なんて願望はないシンデレラは当然のようにそう考えた。
ぽつりと呟いたつもりだったが、どうやらモモエに届いたらしく、モモエは
「そうよ、さっさと帰って頂戴」
と言い放ち、王子の近くに群がる女性の中に入って行った。

はっきりそう言われては仕方がない、自分もそう思ってしまった。
シンデレラは肩を落とし、ゆっくり王子から遠ざかった。




「あ!」




ぽんっと放たれた男の軽い声は、どんよりと沈んでいたシンデレラの心にも届いた。

どきりとして顔を上げる。

向こうには、女性に囲まれた王子がいた。

女性たちは、王子の正面を開け、シンデレラを見つめている。


「ちょっと待って、お姉さん」
何も悩むことなど無さそうな声。いや、そんなことは有得ない。一国の王子なのだから。
「まだ始まってもいませんよ」
声が、近づいてくる。つまり、本人も。

慌てて逃げようと回れ右をしようとする。が
ぎゅっと手を握られ、心臓が破裂しそうだ。

心臓を押さえながら振り返ると、跪き、微笑んでいる王子の姿があった。


「一緒に踊ってくれませんか」

とどめをさされた様な感覚に陥った。
頭が真っ白になった、なのに。

こくり、と頷いていた。




つづく