コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.17 )
- 日時: 2014/01/18 00:01
- 名前: いろはうた (ID: UgVNLVY0)
*振り返って見れば、そこには変わらず静かに歩く四条君の後ろ姿がある。
違う。
四条君からじゃない。
もっと遠く。
そのさらに向こう。
講堂のあたりだ。
確かに、そこから感じる。
異質で巨大な霊力を。
鈴虫が鳴く音のみがその場に響く。
少しずつ、四条君の背中が闇に紛れていく。
少しずつ、その異質な霊力に近づいていく。
彼は、霊力を感じられないのだ。
撫子と違って、普通の人間だから。
撫子は少し迷った後、四条君の背中に向かって駆け出した。
そして、彼の制服の袖をつかんだ。
「四条君!!」
彼は驚いたように素早くこちらを振り返った。
暗くて、彼の表情まではよく見えない。
「きょ、今日は、南門からじゃなくて、正門から帰ってくれない…?」
沈黙が落ちる。
…だめだ。
きっと彼は撫子とのことをあやしみまくっているに違いない。
(な、なにか、上手い言い訳を…)
「た、たまには、気分転換もいいかなーって思って…」
「…正門から帰るなら、途中まで一緒に帰ってもいいけど」
「…へ?」
苦し紛れの言い訳を言おうとした撫子は、思わず四条君の顔を見上げた。
月明かりに照らされた綺麗な瞳が、静かに撫子を見つめていた。
吸い込まれてしまいそうな錯覚。
一瞬、見とれる。
だが、すぐに再び背に冷たいものが走る。
四条君は、撫子が暗闇が怖いから無理に理由をつけて一緒に帰ってもらおうとしている、
と、どうやら勘違いしているようだ。
だが、もうそれにはかまっていられない。
異質な霊力がさらに濃く、大きくなったのだ。
まずい。
本能的に悟った。
このままでは、何か起こってしまう。
「違うの。
一緒に帰ってほしいんじゃなくって——————」
そこまで言ったところで、撫子は、彼の視線が自分の手に注がれていることに気づいた。
夜目にも見て取れるほど、彼の制服の袖口を掴む指は震えていた。
あわてて手を引っ込めたが、見られてしまったかもしれない。
「と、とにかく、今日は正門で帰ってね!!」
それだけ言い残すと、撫子は四条君の傍を離れ、講堂に向かって駆け出した。