コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.31 )
- 日時: 2014/01/20 22:34
- 名前: いろはうた (ID: UgVNLVY0)
*慎重に講堂の玄関に入り、右側の壁にある電灯のスイッチを一つずつつけていく。
パチン、パチンという音がやけに大きく響いた。
全部つけ終え、今度は講堂の木製ドアを見た。
確かに感じる。
冷たい汗がまたも背を伝う。
やはり、何かが扉の向こうにいる。
撫子は、ゆっくりと扇に手をかけると、思いきってぐいっと押し開けた。
目の前に広がるのはおびただしい数のいす。
それらの向こうににはワインレッドのカーテンでふちどられた舞台。
その舞台の中央に、『それ』はいた。
『それ』は闇だった。
舞台の中央だけ、多量の隅を落としたかのように、真っ黒だ。
撫子は後手で扉を閉めた。
それが合図となったように闇がうごめく。
空気を切り裂く鋭い音と共に、闇が触手のような黒い帯をすばやく撫子に向かって放った。
『軽化』
青き言ノ葉によって、体が軽くなる。
『加速』
撫子は新体操のような軽やかな動きで黒い帯をかわすと一気に舞台まで駆けた。
その動きは、もはや人間のものではない。
言霊が撫子の身体能力を増幅している。
途中、迫りくる帯を、刀で数回はね返したが、全く手ごたえがない。
眉をひそめた彼女の前で、闇が揺らめいて何かを形作り始めた。
黒ヒョウだ。
黒ヒョウに変化した闇は、しなやかな動きで駆け、その勢いで窓に体当たりした。
思わず足を止めた撫子の耳に、ガッシャンバリィンッッという
けたたましい音がつきささる。
キラキラと輝くガラス片をまき散らしながら、
黒ヒョウは見事窓をつきやぶって講堂から脱出した。
「……」
ガラス代っていくらするのだろうという疑問はあまり考えないようにして、
彼女はすぐさま黒ヒョウに続いて、講堂の非常口から出た。
ひやりとした夜の気配が、体にまとわりつく。
————いた。
探す必要もない。
黒ヒョウは撫子が来るのを待っていたのだから。
少し離れたところにいた黒ヒョウは、撫子の姿を認めた瞬間、
今度は、校舎の窓に向かって駆けた。
「…あ」
ガッシャンッバリィッンッ
再び甲高い破壊音が夜の闇に響き渡った。
キラキラとガラス片が月明かりを受けて輝く。
「……………」
ものすごく追いかけたくなかったが、撫子は黒ヒョウの後を追って
校舎の小ドアを言霊で破壊した。
轟音と共に、金属製のドアがふっとび、あたりにけたたましい音をまき散らす。
「…………………………」
ガラスを割るよりはいくらかマシだとは思ったのだが、あまり変わらない気がする。