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Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.104 )
日時: 2014/02/24 23:21
名前: いろはうた (ID: 6Bgu9cRk)

*和火の体を、自分の方にぎゅっと引き寄せる。


「あなたは、私を知っているの…?」

「よく、知っているよ。

 『貴女』を長きにわたり、探し求め続けていたのだから。

 今、『貴女』が眠っていることも知っている。

 私と共に来るといい。

 『貴女』を、目覚めさせよう」


ぞわりと肌があわだつ。

本能的にこの人は怖いと感じた。


「さあ、おいで」


怖いはずなのに、何故か、無性にその手を取ってしまいたい衝動に駆られた。

無意識のうちに伸ばしかけた手を。熱いものに掴まれた。

和火の手だ。

彼は薄目を開けて、荒い息を吐きながらこちらを見ている。

目が、行くな、と何よりも雄弁に告げていた。

それを見て、すっと心が落ち着いた。


「私は、行きません」


撫子の瞳が青に輝き、髪が銀の糸束へと化す。

左頬に浮かぶ証印。

霊力は高まった。

いつでも、『話せる』。


「ああ、まことにどれほど時が経とうとも、『貴女』は変わらぬ。

 変わらず、見る者を狂わせるほど……美しい」


白夜の瞳が、鮮烈な紅に輝いた。

その歪な紅は血のようにも見えた。


「あまりに美しくて、手に入れずにはいられぬよ」


彼は差し出した手を、すっとひいた。

術を使う気だと瞬時に悟り、撫子は彼が口を開くよりも早く素早く『話し』た。




『転送』




青年の唇がより深い笑みの形に刻まれたのが見えた。





『南に二里』