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Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.105 )
日時: 2014/02/26 14:01
名前: いろはうた (ID: 6Bgu9cRk)

*気づけば、撫子たちは見知らぬ鳥居の前に座り込んでいた。

『転送』に成功したようだ。

この鳥居の先は神社なのだろうかと、朱色のそれを見上げる。

あたりに人の気配はない。

先ほどの青年、白夜はうまくまけたようだ。

ぜいぜいと耳障りな自分の呼吸音がその場に響く。

学校の体育の授業でシャトルランを限界まで走り切った時のような状態だ。

体はだるく、視界はぐらぐら揺れる。

もともち残り少なかった霊力をほとんど使い切ってしまったことを知る。

ぽたぽたと額から汗が落ちてむき出しの地面に吸い込まれた。

本当に白夜がついてきていないかを確かめると、撫子は和火の顔をのぞきこんだ。


「和火…、和火…立てそう……?」

返事はないが、彼は無言で体に力を入れてふらふらと立ち上がろうとする。

撫子は、彼の体を支えながら、ゆっくり立ち上がった。

鳥居の向こうに行ってみよう。

人が住んでいるに違いない。



「——————鬼ごと(鬼ごっこ)は、これで終わり…?」



今、聞こえるはずのない声に撫子は愕然と目を見開いた。

信じられない思いで振り返ると、そこには何もなかったかのように立つ白夜の姿があった。

だが、彼の後ろには、先程のように、お付の者達の姿はない。


「なん、で……」

「特殊な結界転送術を、お付の者に使わせた。

 驚いてはならぬよ、巫女姫。

 瞬身が使えるのは君だけだと驕(おご)ってはならぬ」


そういうと彼は、笑みを浮かべた。


「それにしても、『貴女』の力は少しも衰えていない。

 今のでそれがよくわかったよ。

 血と力は脈々と受け継がれている。

 よきことだ。

 しかし、君には私を拒むことは許されぬ。

 『貴女』は目覚めなければならぬのだから」


撫子の足は、反射的に鳥居の向こうへ駈け出そうとしたが、すんでのところで理性がそれを抑えた。

鳥居の向こうに住んでいるであろう人々を、このよくわからないことに巻き込んではならない。


「ああ。

 それともその少年が『貴女』を縛る鎖となっている…?

 ……ならば……殺(あや)めてしまおうか」

「!!」


一歩、また一歩、白夜が近づいてくる。

撫子はめまぐるしく考えた。

どうしよう。

どうすればいい?

何の言霊を『話せ』ばいい?

霊力は残り少ない。

どうすれば、何をすれば、何を『話せ』ば、和火を助けられる…?

白夜が伸ばしてきた手の影が撫子の顔にかかった。