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Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.110 )
日時: 2014/02/27 14:04
名前: いろはうた (ID: 6Bgu9cRk)

*撫子は瞬時に体中の霊力をかき集めて、口を開いた。


『せい——————』




ガシャンバリィンッッ





ガラスが砕け散るようなけたたましい音が響き渡った。

キラキラと輝きながら、緋色の欠片があたりに散る。

その中心に瞳を緑に輝かせ、右手に刀を握った和火がいた。

少し遅れて、和火が、三重にも張られていた結界を刀の一振りで破壊したのだと知る。

信じられない。

あれは、とても強力な結界だ。

霊力を持たない普通の人間においそれと壊せるものではない。

どうして、破壊できたのだろう。

白夜もまさか破壊されるとは思っていなかったようだ。

彼にわずかに隙ができる。

撫子はそれを見逃さなかった。


『静止』


白夜の体が青き言ノ葉によって、見えざる力にがんじがらめに縛られる。

今、彼は指一本動かせない状態だ。


『転送』


とっさにその言霊が口をついて出た。

ぶわっと青い光の粒が空気中から出でて、白夜の体にまとわりつく。

どこへ飛ばそう。

どこへ飛ばせばいい。



——————それは、私の故郷。




『水面に移りし月の影あるところへ』




撫子は目を見開いた。

今、勝手に口が動いた。

今のは、古い地名だろうか。

一体どこに白夜を飛ばしてしまうのだろう。

白夜と目が会った。

彼は微笑んでいた。

心底嬉しそうに。

そして、青い光がひときわ強くなって、いっしゅん目を閉じて、再び開いた時には、すでにその姿はなかった。

それ以上は姿勢を保てなかった。

ふらりと撫子の頭が揺れ、地面に体が崩れ落ちる。


「おい!!」


先ほど、獣の一族と呼ばれていた若者の声が聞こえたが、返事ができない。

体に力が入らない。

意識が遠くなっていく。

霊力を使い切ってしまったんだ、と思う前に意識は黒く塗りつぶされた。




——————ああ、やはり、『貴女』は変わらぬ。



白夜の声が聞こえた気がした。