コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.123 )
- 日時: 2014/03/03 23:35
- 名前: いろはうた (ID: 6Bgu9cRk)
*「…なるほどな。
異界から来たまれびと、ってやつか…」
全部話し終えると、若者はあごに手をあてて考えるそぶりをした。
やがて、金色の…あぶらあげのような色をした目がこちらを見た。
…おなかがすくとなんでもかんでも食べ物に見えてしまう。
「だが、あの男の力は、わからねえ…と」
「はい。
…本当に偶然巻き込んでしまっただけなので」
そう。
和火のことはほとんど何も知らない。
何も知らないはずなのに……彼のことを考えると、胸が奇妙な懐かしさで満たされる。
まるでずっと昔から彼のことを知ったいたかのような。
「信じてくれますか…?
私の話…」
時空間移動、なんていう非現実的なことを信じろというのも無茶な願いかもしれない。
おそるおそるたずねると、若者はまた眉間にしわを寄せた。
「何で信じねえんだよ。
信じるだろ普通。
今更、おまえが嘘をついてもおまえ自身に何の得もねえしな」
「は、い」
ものすごくぶっきらぼうかつ遠回しに、撫子の言うことを信じると言ってくれた。
嬉しい。
人を信じるにはとてもエネルギーを使うのだから。
「…よし、行くぞ。
……立てるか?」
とっさになんのことを言われたのか分からず、撫子はきょとんとした。
すぐに先ほどの和火に会いに行く約束だと悟り、あわてて立ち上がろうとする。
「は、はい!
大丈夫でおぶっっ!?」
体にうまく力が入らず、顔面を思いっきり床にうちつけた。
…霊力も体力もまだほとんど戻ってきていないらしい。
あまりの痛みに声も出ない。
「お、おい…大丈夫かよ。
やっぱ、やめとくか…?」
「い、いえ!
大丈夫れす!
行きます行きます!!」
大丈夫れす、大丈夫れす、と全然大丈夫じゃない口調で言いながら、撫子はよろよろ立ち上がった。
巫女たる者、一度くらいの顔面クラッシュで泣いてはならん!と目じりの涙を引っ込めた。
眉間にしわを寄せながらも、ゆっくりとしか歩けない撫子を待ってくれている若者を見る。
彼には聞きたいことがたくさんある。
だがまずは、和火の無事を自分の目で確かめたかった。