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Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.132 )
日時: 2014/03/11 13:03
名前: いろはうた (ID: DYDcOtQz)

*「…慧お兄ちゃん…?」


撫子たちが立っている家の中から、声と共に一人の少女が現れた。

緋色の瞳が美しい、長い髪にふっくらとした白い肌が印象的な、撫子と歳の近そうな女の子だ。


「…茜。

 元気か?」


対するどうやら「慧」という名前らしい若者は、「茜」と呼んだ少女を見て表情を柔らかくした。

兄妹…だろうか。

それにしては二人の顔立ちはあまり似ていない気がする。


「うん。

 お兄ちゃん。

 …この方は…?」


透き通った緋色の瞳が撫子に向けられる。

撫子は知らず知らずのうちに少し緊張した。


「こいつは、おれが言っていた、まれびとだ。

 おまえが面倒をみている男のつれらしい。

 そのつれに、会いたいんだとよ」

「そう、そうなの…」


茜の視線が撫子の体をぐるりと一周した。

そして、彼女は慧に向き直った。


「慧お兄ちゃん」

「なんだよ」

「お兄ちゃんのばかああああああああああああああああああああああああっっっ」


茜による右回し蹴りが慧の腹に炸裂し、彼は受け身も取れずに数メートル華麗に吹っ飛んだ。

撫子はただただ唖然としているしかない。


「ばかばかばか!!

 なにこんなかわいい女の子を夜着(パジャマ)のまま連れ出してるのよ!!

 ほんっとありえない!!」

「………」

「少しは女の子の気持ちを考えてよね!!

 女の子にとって、夜着のまま歩くっていうのは、下着のまま歩くのと同じなんだから!!」 

「………………」


慧からの返事はない。

あまりの衝撃に声も出ないのかもしれない。

鼻息荒く言いたいことを言い終えると、彼女はくるりと撫子の方を向いた。

彼女のこの細い体から、一体どうやって慧を蹴り飛ばせるほどの力がでるのだろう。


「撫子…って呼んでいいかな?」

「は、はい…!

 でもどこで私の名前を…?」


茜はふわりと笑った。


「あの人、ずーっとうわごとで、なでしこー、なでしこー、ってぶつぶつ言ってたから。

 よっぽどあなたが大事なのね〜」


あの人、というのは和火のことのようだ。

なんだか、恥ずかしくて撫子は彼女から少し目をそらした。


「照れちゃって、かわいーの。

 私は茜。

 茜って呼んでね。

 敬語もなにもなしよ。

 歳近そうだしね」

「う、うん。

 和火の面倒をみてくれて、本当にありがとう」

「いいのいいの!

 それよりお兄ちゃんはほっといて、早く家の中に入ろう?」


いいのだろうかと思いつつ、茜に背中を押され、慧を外にほったらかしたまま家の中に入る。


「そっか…あの人…和火っていうんだね…」


家中を案内してくれる茜が不意にぽつりとつぶやく。

なんだかその憂いを帯びた表情に、心がざわついてしかたなかった。