コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.135 )
日時: 2014/03/12 14:46
名前: いろはうた (ID: DYDcOtQz)

*少し薄暗い家の中へと案内される。

通路はなく、大きな囲炉裏を中央に置いた居間がある。

そこから複数の部屋や倉庫に分かれているようだ。

茜は迷いなく一つの戸を開けて中へ入り、撫子にも入るように促した。


「かず…ひ…」


確かに和火が寝かされていた。

温かそうな毛布もきちんと掛けられている。

なんだか理由もないのに泣きそうになった。


「ここに運ばれてきた時からずっと熱があって、一度も目を覚まさないの。

 でも、今はだいぶ落ち着いてきているわ」

「うん…」


撫子は、和火の枕元にそっとしゃがみこんだ。

目は固く閉ざされている。

だけど呼吸は穏やかで、顔色は少しいつもより赤いのが気になるくらいだ。

大丈夫。

きっと大丈夫。

きっとそのうち目を覚まして、また、ばかなめこ、って呼んでくれる。

そう一生懸命言い聞かせる。

他の誰でもなく自分に。

そうしないと、人目もはばからず大声で泣き叫んでしまいそうだ。


「面会はすんだかよ」


慧が痛そうにおなかをさすりながら部屋に入ってきた。

特に茜に怒らないところを見ると、どうやらああいうことは日常茶飯事らしい。

撫子は、あることを決意して、慧と茜に向き直った。


「お願いがあります」


突然の撫子の申し出に二人はきょとんとした表情を浮かべた。

撫子はきちんと正座をして床に手をつくと額を床に押し付けるようにして二人に頭を下げた。


「どうか、しばらくの間、和火と私をここにおいてくれないでしょうか」


返事はなく、沈黙のみがその場に広がる。

撫子は焦って顔を上げた。


「あの!

 私なんでもします!!

 洗濯でもお掃除でも庭の雑草取りでもなんでもします!!

 言霊を使った結界でこの村を守ることもできます!!

 だから……っ」


茜が無言でこちらに近寄ってきて、撫子の目の前にしゃがみこんだ。

次の瞬間、ばちん、という音と共に、目の前に星がとんだ。

茜が両手で撫子の頬を軽くたたいたらしい。


「あたりまえでしょ!!

 なにそんなことお願いしてるのよ!!

 私たちが撫子たちを追い出すような人に見えるの!?」

「…おまえは見える」

「お兄ちゃんは黙ってて!!」

「……」


撫子はまばたきを繰り返した。


「ここに、おいてもらえるの…?」

「だからー、あたりまえだってば!!」


撫子は、しばらくの間ほうけていたが、やがて小さな笑みを浮かべた。


「ありがとう。

 茜。慧さん」