コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.163 )
- 日時: 2014/03/21 23:55
- 名前: いろはうた (ID: DYDcOtQz)
- 参照: http://pixiv.me/asaginoyumemishi
*「ここをもう少し行ったところにたくさん生えているからね〜」
「うん」
撫子がうなづいてみせると、
茜ははしゃいだように手に持っている薬草入れの籠をぶんぶん振り回した。
村にはあまり茜と同じ年頃の少女がいないらしく、
撫子といるときの彼女はとても楽しそうにしてくれる。
撫子と茜は村から少し離れた森に、眠り続けている和火の目をさまさせるための薬草を採りに来ていた。
いつまでたっても目を覚まさない和火の容体にすっかりしょげた撫子をみかねた慧が
茜に薬草採りを言いつけたらしい。
しかし、彼女たちの隣に、言いつけた本人の姿はない。
「慧は?」
「お兄ちゃんは、なんか長老様に呼ばれてるんだって〜」
「そう、なんだ…」
彼が長老に呼ばれている原因が自分のせいに思えてならない。
そもそも、ここの世界の人から見たらうさんくさい恰好をした、うさんくさい理由で迷い込んだ
”まれびと”である撫子をかくまっている時点で慧の立場はよい方向には向かっていないはずだ。
「撫子がとってくるのは、白い筋の入った、ギザギザした葉っぱのやつ!
先っぽが丸いのね!」
沈んだ表情を浮かべる撫子を励ますように、茜が明るく言う。
彼女の明るさには、この短い期間の間にも何度も救われてきた。
撫子が弱々しくも笑みを浮かべた時、茜は不意に止まった。
「じゃあ、ここでいったんお別れ!
二手に分かれた方がたくさん採れるだろうしね。
半刻(30分)したら、またここに戻ってね。
全然採れなくても構わないから、ちゃんと戻ってくるんだよ!」
「うん!
ありがとう茜」
じゃあね〜、と言いながら軽い足取りで木々の向こうに消えた茜の背を見送ってから、
撫子は彼女と反対の方向に歩き出した。
二手に分かれることに反対しなかったのは、
白夜に万が一遭遇してしまった場合のことを考えての上だ。
あの、白夜という青年の力はひどく強い。
茜をかばいながら、白夜と戦える自信などない。
彼女を巻き込まず、傷つけないためにも二手に分かれた。
きっと自分の判断は正しい、と心の中でうなづいた時、
何かを踏んで足首を変な方向に曲げてしまい、大きく体のバランスが崩れた。
考え事をしながら歩いていたせいで足元への注意がおろそかになっていたようだ。
地面に体が激突するだろう、と思い、とっさに身を固くしたが、代わりに奇妙な浮遊感が体を包む。
「う、うそ…」
崖だった。
手を伸ばした先に地面はない。
体勢を立て直せず、悲鳴すら上げられずに撫子は崖から落ちた。
びゅっと耳元で風がうなる。
空が見えた。
濃い灰色だった。
伸ばした手は、何もつかめなかった。