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Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.182 )
日時: 2014/03/29 22:28
名前: いろはうた (ID: DYDcOtQz)

*一方、撫子は、姿の見えない相手に対して、言霊は効くのか、と真剣に考えていた。

どういう言霊を『話せ』ば、白夜をおからにできるのかと。



『おからにな〜れ♪』



…いや、単純すぎる。

ここは、倒置法を使って力強く。



『なれ。おからに』



……なんか違う。

それでは、ここは、おから、という単語を強調してみるべきか。



『OKARA☆』



………だめだ。

これではおからではなく、マッシュポテト化した大豆が出てくるだろう。

撫子は頭を抱えた。


『巫女姫』


そう呼ぶな、と先ほど言ったばかりなのに、白夜はお構いなしに撫子のことをそう呼んでくる。

怖い。

その慣れてはいけない呼び名に慣れてきている自分が。


『君に、夢を…みせよう』

「ゆ、ゆめ……?」


撫子は、彼の唐突な言葉に眉根をよせた。


『ああ。

 美しい、浅葱の夢を。

 『貴女』を目覚めさせるための、過去の夢を』


そのとたん、強い感情が体の中で吹き荒れた。

いやだ。

夢なんかみたくない。

過去なんか、知りたくない。

知らないままでいたい。

私が「撫子」でいられなくなってしまう。


『これは…物語。

 私の力ではすべてを見せることはかなわぬ。

 だから、物語の一片を、過去の欠片を、一晩に一つ、毎夜夢として君にみせよう』


やめて。

みたくない。

知りたくないの。

お願いだから。

そう思っているのに、そう叫びたいのに、声が出ない。

体からゆっくりと、だが確実に力が抜けていく。


『まず手始めに、『貴女』の始まりの物語を語って聞かせよう。

 すべての始まり。

 『貴女』にとって遠き昔にありしこと。

 忘れてしまうほど古き記憶』


ぐにゃりと景色が曲がった。

意識が遠くなっていく。


『君が『楓』だった頃の記憶だよ。

 ……巫女姫』