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Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.193 )
日時: 2014/04/01 09:22
名前: いろはうた (ID: DYDcOtQz)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

*絹ごしの滑らかボイスが消えた途端、ふわりと視界が緑に染まった。

立ち並ぶ木々。

柔らかな木漏れ日。

どうやら今、森の中にいるようだ。

周りの景色があまりにもリアルで、撫子はしばしの間見とれた。

白夜の術によるものだろう。

辺りをきょろきょろ見渡していた撫子だが、不意にその動きが止まった。

僅かにだが、枯葉を踏みしめる足音が聞こえた。

撫子の顔色が変わった。

しこも、こっちにだんだん近づいてきている!!

相手の気配の消し方がうますぎて、かなり近づかれるまで気づけなかったのだ。

隠れる間もなく、相手が姿を現した。

銀髪の少女を抱えて駆ける、一人の若者だった。

彼は、すぐそばに立っている撫子には目もくれず、突然立ち止まると、そっと少女を地面に立たせた。

どうやら、向こうからは撫子の姿は見えないらしい。

白夜の特殊な術の効果だろう。

しかし、撫子が驚いたのはそこではない。

婚礼衣装のような豪奢な着物をまとっている、銀髪の少女の容貌に、

撫子は声をあげそうになるのを必死にこらえていた。

あまりにも似ていた。

自分に。

撫子は食い入るようにその少女を見つめた。

鼻や唇などの顔のパーツだけでなく、あの青い瞳や銀とも灰色ともつかぬ髪色までそっくりだ。

雰囲気もどことなく自分に似ている。

奇妙な懐かしさが胸に生まれた。

彼女が、白夜の言っていた、自分の、水無月撫子の先祖に違いない、

と撫子は直感的に悟った。

だけど、彼女の方がずっと美しかった。

いや、美しいという言葉だけでは終わらせたくないほど、彼女の方がきれいだった。

まるで、儚くも凄絶で清らかな光を放つ、月の女神のように。

ああ、そうか。

彼女は、『恋』をしているのだ。

さっき、白夜が語ってくれたではないか。

たしかヒタギとかいう青年に、彼女は全身全霊で恋をしているのだ。

哀しいことや苦しいことや恋しいことをたくさん乗り越えると、

ああまで美しくなるのか、と自然にため息が漏れた。

白夜は過去を見せると言っていた。

2人の姿をもう一度見つめた。

これが…過去?

…そう。そうだ。

これは、過去だ。

遠き昔に実際にあったことだ。

ああ、そうか。

撫子はもう一度悟った。

なんで、過去だ、と思ったのはわからない。

でも、それは事実だ。

これは過去の出来事だ。

何故か悟ってしまったからわかったのだ。

自分は、撫子という娘は、あの楓という娘の生まれ変わりなのだと、魂と霊力が気づいてしまったから。