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Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.205 )
日時: 2014/04/04 17:49
名前: いろはうた (ID: DYDcOtQz)

*「——————っ!!」


撫子は目を見開いた。

右頬に地面の感触。

湿った土の匂いが鼻をかすめる。

胸が、痛いほどどきどきしていた。

撫子は見知らぬ森の中…いや、薬草を採りに来た森の中で地面に身を横たえていた。

たしか・・…崖から落ちた。

きっと頭でも打って気絶していたんだろう。

その気絶している瞬間に、白夜の夢の術に囚われた。

ただの夢じゃない。

自分の魂の過去の夢だ。

は、と息が唇からこぼれた。

遠い昔、カエデであった頃の記憶。

のみこまれそうになった。

あの生々しく強い強い感情に。

カエデのじゃない。

レイヤの、カエデへの狂おしい想いにだ。

目を強くつむって、すぐに開いた。

無理に呼吸をならして起き上がろうとすると、右足首に痛みが走った。

顔を歪めて見てみると、見事に足首は腫れ上がっていた。

崖から落ちる際にひねったに違いない。

上を見上げたら、10mほど上空に切り立った崖が見えた。

おそらく落ちる際に途中に生えている草木に何度もぶつかって、

それがクッションとなって今、無事なのだ。

おかげで、腕も着物も傷だらけだが、そうでなければ死んでいた高さだ。

落ちたところも、岩ではなく、ふかふかの土だったことも幸運だった。

そのとき、撫子の上向いた鼻の頭に、ぴちゃりと雫が落ちた。

すぐにぱたぱたとおでこにも雫が落ち、あっというまにどしゃぶりになった。

そういえば、茜がもうすぐ雨だ、と言っていたっけ。

彼女は無事だろうか。

彼女のもとに行きたいが、この足じゃ歩くどころか立つことも困難だ。

少し動かすだけで痛みが走る。


「……っう」


うめきをのどの奥で殺した。