コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.245 )
- 日時: 2014/04/20 22:34
- 名前: いろはうた (ID: DYDcOtQz)
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
*おれの前には、愛しく想う娘、ナギが横たわっていた。
ナギは不治の病におかされていた。
伝染病がはこびる今の世、ナギは一人で村々を回って、必死に村人たちを救っていた。
しかし、そのナギが伝染病にかかり……今は余命も残り少ない。
おれは、彼女に恋をしていた。
幼い頃より彼女の騎士として彼女の傍につかえ続けて、いつのまにか彼女を愛しいと思うようになった。
他者のために危険もいとわない。
そんなところにはらはらさせたが、そんな彼女が好きだった。
姫巫女であり守るべき存在であるナギに騎士であるおれが恋などしてはならないのに、
自分を制そうとすればするほど、彼女に惹かれた。
どうしようもなかった。
「……ねえ、ハヤテ」
「どうした」
「まだ…好きな女性がいるの?」
一瞬呼吸が止まった。
熱にうるんだナギの青い瞳がおれだけを映している。
「…ああ」
「まだ…好きなの?」
「ああ」
「他の女性なんて考えられないほど?」
「ああ」
他の娘なんか目に入らないくらい、幼い頃からずっと君が好きだ。
だが、言えない。
言ってはいけない。
騎士ごときのおれが。
「……君は?」
ナギが弱々しく目を開けた。
痩せ細った体が痛々しい。
抱きしめたら折れてしまいそうだ。
「……いるわ」
「……」
「他の男性なんて考えられないくらい」
ナギの青い瞳は閉ざされた。
今、彼女に思われているのが自分じゃないのがたまらなく悔しく腹ただしい。
こんなに傍にいるのに、彼女に想われていない。
ナギに想われている男が憎たらしくてならない。
ナギがこんなに苦しんでいるというのに、どうしてこういう時に傍にいないのか。
おれだったら……
「……はや……て……」
そっとナギの手がおれの手の上に重ねられた。
血管が青く浮いて見える程、白く透き通っている。
そのあまりの白さに、彼女が儚く消えてしまいそうな気がした。
泡沫(うたかた)のように。
「今まで、ありがとう……
幸せに……なっ…て……」
ナギの目がやけにゆっくり閉じられた。
とさり、とナギの手がおれの手からすべりおちた。
世界が止まった。
「……ナギ……?」
返事はない。
「ナギ」
彼女は応えない。
「ナギ、ナギっ!!」
考えるよりも先に、体が動いた。
彼女の肩を掴んで揺さぶった。
骨と皮だけの、痩せ細ったきゃしゃすぎる体。
ああ、どうして。
神よ。
どうして、ナギが病におかされ、おれは彼女の身代わりになれないのだ。
「うそだ……こんな…こんな……!!
まだなにも、伝えてない!!」
おまえが、好きだ、って。
おまえを愛している、って。
彼女は、目覚めない。
永久に。
「目を開けてくれ!!
ナギ!!」
病がおそったのはどうしておれではないのだろう。
「おまえのいない世界で、幸せになどなれるものか!!」
ナギのためなら、命など少しも惜しくないのに。
「別の男を愛していても構わない。
頼むから……目を……開けてくれ……!!」
臓腑よりしぼりだされた祈りと切望の入り混じった言葉は神には届かず。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ……!!!!!!」
おれはこの時、この世の誰よりも、神を恨み、この上なく力を欲した。