コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.261 )
日時: 2014/04/26 00:36
名前: いろはうた (ID: DYDcOtQz)
参照: http://pixiv.me/asaginoyumemishi

*(あの、うつけ……!!

  なにが、探さないでね、だ!!)


慧は撫子を追って家を飛び出したところだ。

朝のさわやかな風が頬を撫でるが、それを真っ黒に染め上げそうなほど慧の顔は不機嫌だった。

もともと撫子のことは、村のみんなに紹介するつもりだった。

もう少し、撫子が村になじんでからだ。

……まさか、勝手にいかれるとは…。

よそ者の撫子が、村に入ってきたこと自体、みんなはきっとよくは思っていないだろう。

拒絶の言葉をぶつけられて撫子は傷つくかもしれない。

そうならないように、時期を見計らっていたというのに、あの娘はなぜこうまで事態をひっかきまわすのか。

女の涙は、嫌いだ。

特に撫子が泣くのは好きじゃなかった。

まるで心が空っぽになってしまったかのような、ありえないほど透明な涙を流すからだ。

昨日の雨に打たれ、ずぶ濡れになった撫子の姿を思い出す。

震えていた華奢な肩。

心配をかけまいと、くじいた足の痛みを訴えないように固く引き結ばれた唇。

それに反して、すがるようにうるんだ瞳。


(おれが……守らねえと……)


何故そう思うのかもわからず、慧は走る速度を上げた。


「———」


かすかに声が聞こえた。

撫子だ。

声の調子からして焦っているようだ。

慧は舌打ちをして、河原の方に向かった。

たしかこの時間帯は、女たちが川で洗濯をしているはずだ。

あまりよろしくない状況だ。

女は、怖い。

特に、母親というものになったことのある女は、怖い。

この村は気性の荒い熊のような男が多いが、その男たちでさえ自分の女房には尻に敷かれまくっている。

そのような女たちが多い村だから、茜もあんな暴力的に育ってしまったのだ。

……このままでは、撫子は言葉だけでなく、

村の女たちからの渾身の平手打ちの一つや二つくらってしまうかもしれない。

させるものか、と慧は強く地面をけった。