コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.1 )
日時: 2014/03/13 18:23
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)



——1話——



「中村さーん」
「…さようなら」
「えっ、ちょ、コウ、ひどくない今の流れッ?!」
「……はづきに呼ばれたら、速やかにその場を離れる…、これ、常識な?」
「新しい常識作るって、コウはどんだけ偉いの☆ただのバカかと思ってた☆」
「リナは黒いよ!!マジで黒いから!!」
「馬鹿はリナのほうでしょ〜?能無しの塵が★」
「倍返しだ?!」


小学6年生生活も、残すところあと少しとなったある日。

後藤はづき、中村コウ、悠木ラノ、高柳リナの4人は、高級そうなマンションのある1部屋——リナの家である——にて、遊ぶ、というか、宿題を広げながら会話していた。

「でもさぁ、久しぶりだよねぇー。このメンバーで集まって遊ぶの」

はづきが指で鉛筆を回しながら、誰に、というわけでもなく言葉を放った。

「…これは遊びか?」
「えぇ〜っ?宿題してるんじゃないの?」
「ふふふ、そうだったねー。…1人だけ、本当に無能でなぁーんにも進歩してない馬鹿がいるけど」
「んな…っ!ちょっとは進んだから!!」

既に宿題を終え、余裕な表情を浮かべるはづきの向かいで悶々と計算問題に挑んでいたラノが、鉛筆を止め、顔を上げて反論した。

「ふぅ〜ん、5分前から今に至るまでに、小数点1コ、ねぇ〜?」
「き、キレーな小数点を目指して、丁寧にかいただけだし!?」
「小数点なんて所詮、誰が書こうが鼻〇ソみたいなもんだろ…」
「コウ、サイッテ————ッッ!!!!」

とてつもなく下品な発言をしたな中村を、リナが全力で平手打ちした。

「なっ…なにするんだっ!」
「最低最低最低最低サイッテ——ッッ!!」
「……何千回でも言ってやるぞっ、この…っ、鼻〇ソ女————ッッ!!!!」
「こ〇す…!」
「低、レ、ベ、ルゥゥウウウウ!!ぶっはッッ!!!!」
「み、みんなまずは落ち着こ!?」

ギャアギャアと、室内は一瞬にしてうるさくなった。まるで、真夏に蝉が奏でる大合唱のように。





数分後。

「………」
「………」
「あ、こ、ここ、分かんないなぁ〜、…なんちて…………?」
「くっ……!ぷぷ…ぅ、くくくく……っ!」

しばらくして、室内はようやく平常な空気を取り戻した。

「ふぅ…っ、最近になって生意気度が増したね、コウ…!!」
「ふふふ…っ、本当にね。昔はもうちょい可愛いげがあったのにね…ぷくくっ、『うぁぁんっ!りながっ、うぅ…!』」

やたらと上手い幼い頃の中村の真似を疲労したはづきを、リナは冷ややかな目で見つめた後、小さく「きも」と言った。
中村はよほど過去を思い出したくないのか、必死にはづきを止めようとした。

「こ、こういうときに過去の話すんのは、やめ…」
「しかもカナさんにべーったりで——」


はづきが、過去について語り出そうとした、その時だった。


——ガチャリ。


玄関の扉が開いた音がしたと思った次の瞬間、大きな声が聞こえてきた。


「およよっ!?本日は靴が多いねー……って、こ、この靴は……!!」
「おじゃましまー…あれっ、この靴ははづきのやつだ〜!」


「カナちゃんとかづ君さんっ!」


高校生である、コウの姉、中村カナと、はづきの兄、後藤かづきが、家に上がってきたのだ。





「え?コウの可愛さについて語り合ってた?なんなら私も混ぜてもらおうかなぁーっ!」
「違うよカナちゃん、コウがあまりにも憎たらしいから……」
「はっはっは〜、リナちゃん!それはツンデレなコウの、遠回しな愛情表現だと思えばいいんだよっ!!」
「ち、近いから、カナ、抱きつくな…っ!」
「えぇー、やーだよ〜んっ。なぜなら愛しているから!!」
「……っ!!」
「しばらく会ってなかったからなぁ〜っ、また帰っちゃうくらいなら、ここで補給しとかないとっ!!」
「なに補給してんだよっ!?」

ブラコンっぷりを発揮しながら、カナは後ろからコウに抱きついたまま、コウの頭に顎を乗っけるようにして、笑顔でリナと話していた。

一方、中村姉弟とリナが、ほのぼのと会話しているというのに、後藤兄弟の間では、一方通行な戦いが繰り広げられていた。
ラノはそんな兄弟を見守るようにして、2人の間でおろおろしている。

「はづき、宿題はどこまで進んだの?」
「君に教える筋合いは無いね」
「いや、答えて差し上げようよ!?」
「こいつに敬意を払う価値もないよ」
「ならはづき、僕は、価値、どうやって上げればいいのかなぁ?」
「とりあえず俺の半径1㎞以内から消えろ」
「絶対に無理があるよね!?」
「うぅん…。はづきのためなら、がんばってみるよ……!」
「かづきさんええ人すぎるでしょ!?」
「無駄無駄。俺、あんたのこと大嫌いだし」
「うぅ…、ちょっと前まではもっといっぱい喋ってくれたのに…」
「…あんなの、ただの罵声だし……」
「いっしょにお風呂とか、眠るのも別々にな——」
「——それ以上言ったりすれば、本当に嫌いになるよ?」
「わぁっ、なら、はづきはまだ僕の事、嫌いになってないんだねっ!」
「……うぜぇっつーの…!」
(うわわっ、やっぱりはづきをここまで手こずらせる事ができるのは、かづきさんしかいないんだ…!)

そう、はづきは珍しく、普段の不気味なニヤニヤ笑いとは違う、嫌悪感を露にした表情を浮かべているのだ。
『素』はづきとでも名付けておこう。

ブラコン高校生2人組の登場によって、また騒がしくなった室内。
その中で、カナが何かを思い付いたような顔をした。


「ふふふっ、久しぶりに幼馴染み同士集まったんだから、少し、昔のはなしでもしよっか?」




続く……。

Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.2 )
日時: 2014/02/24 21:28
名前: 鳥ヤロウ (ID: E0t3qTZk)

「どれから話そうか・・・・あ、お祭りの話とかどう?」

と、カナが切り出すと皆それぞれに話をしだす。

「中村さんは金魚すくい下手だったねぇ〜」
「あ、あれはしょうがないだろっ・・!」
「そいやコウ、金魚取れなくて結局泣いてたよねー!あれはww」
「はづきは射的が上手かったよね〜」
「ラノは、酸素の無駄遣いをただひたすらにしていたよね。」
「話してただけだからな!?」
「コウは付けてた猫のお面可愛かったよねっ!」
「はづきも可愛かったなぁ〜」

「それ言うならリナッ・・・・お前の方が笑えるだろ!
 ”猫追いかけて迷子”になるなんてっ・・・」

「それ言うなああああああああああああっ!!!」


そう 、リナは幼少期、地域の夏祭りで猫を追いかけ迷子になる。という明らかに嘘だろ。としか思えないような事をしでかしたのだ。




それは、遡ること・・・・・・・・・・何年前だっけ?←


そう、確か七年前・・・・


「みんなー、しっかり付いてきてね!!」

当時9歳の少女、中村カナにつられ当時5歳のコウ、はづき、ラノ、リナは(はづきに付いてきたかづき含む)6人は地域の夏祭りに来ていた。






キリがひっっっっっっじょうに悪いですが、一旦切ります。
何せ親が寝ろとうるさいもので←

それでは、さようなら・・・・

Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.3 )
日時: 2014/02/25 18:33
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)


「人、いっぱいいるねぇー」

はづきは黒い浴衣を着て、兄であるかづきと、辺りの人をキョロキョロと——オドオドとの方が正しいかもしれない——見回しているコウとの間で、祭りの様子を観察していた。

少し薄暗くなった空の色の中で、祭りはワイワイと盛り上がる。

やたらと明るい、裸電球の眩しさ。
数々の、美味そうな食べ物の匂い。
つやつやしたリンゴ飴の紅さ。
夏の、入道雲を思わせるボリュームがある、白い綿菓子。
生首展覧会よろしく、数々のキャラクターの顔面が並べられたお面屋。
道に落ちて無惨にも踏みつけられた、元はフライドポテトだった物。
屋台の前でピカピカ発光し続ける、変なアクセサリーたち。
中二全開な、プラスチックにメッキを塗っただけの、無駄にでかくて高い玩具の剣。

祭りの雰囲気に、人は魅了される。

「かづ兄、かづ兄」
「なぁに?はづき〜」
「あんなに大きなけんや、アニメのおめんって、かさばるし、ゴミになるよね?買うだけ、むだだよ?」
「そうだねぇ、でも、かっこいいよぉ〜、けん〜」
「そうかなぁー」

後藤兄弟は、はづきが毒を吐きながらも、兄のかづきが優しく(ただの天然)フォローして会話していた。

Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.4 )
日時: 2014/02/26 20:11
名前: 鳥ヤロウ (ID: UOrUatGX)

「あれ?」

金魚すくいをおえたラノがコウをみると、なにやらいつも以上に周りを見回している。

「コウ、どうしたの〜?」

たたたっ、と駆け寄るとコウの顔から一気に血の気が引いた。

「リナ・・・・・・消えた」

「・・・えええええええええええええええっ!?!?!?」

ラノが笑顔で硬直すると、まさかの時間差攻撃をしかけるという高等技術を使ってきた。

「え、カナさんに言わなきゃ!」

 




Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.5 )
日時: 2014/02/26 20:54
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)


ラノは慌てながらコウの手をぐいぐいと引いて、近くで射的を楽しんでいた後藤兄弟とカナの方に駆け寄った。

「かっ、カナさ〜ん!!」
「…ラッ…、ラノ…、はっ、速…いよ…っ」
「おわ!?どしたの2人とも!」

迷子、リナ、消えた…、幼稚園児の脳内処理が追い付かないほど、ラノは動揺して、上手くこの事態を説明できない。
代わりに、ゼェゼェと息を切らせながらも、ラノよりは冷静に、コウが、説明を始めた。

「はぁっ…、リナが、ぼくたちが…見てない、あいだに、消えた……っ」
「ええぇッッ?!」
「わわっ!ど、どおしたの、カナちゃん!?顔が白いよ!!」

かづきが、驚愕のあまり後ろに倒れてきたカナの背中に押し潰され、地面にペタリと座り込んでしまった。
マイペースなはづきは、事の重大さを分かっていないのか、呑気にヘラヘラと射的を楽しんでいる。

「とっ、とにかく探さないと…!」

Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.6 )
日時: 2014/02/27 15:56
名前: 鳥ヤロウ (ID: ouJb9CUX)

リナがいそうな食べ物屋やの周りなどを探してみるが、見つかる気配はない。


「誘拐・・・・」

コウがぼそっとつぶやいた一言にカナとラノの顔がさらに青くなる。

「は、はやく探さなきゃっ!」

全員で探しにかかるも一向に見つかる気配はなく、祭りも終わりに近づいていた。

「ニャー」


ふと、どこからかこんな鳴き声が聞こえてきた。

「あ、猫!」

Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.7 )
日時: 2014/02/27 21:59
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)


ラノは愛する猫の鳴き声が聞こえてきたことによって、神経という神経が研ぎ澄まされた。

「ちょっと、あのネコと心をかよわせてみる…!!何かきけるかも!」
「ら、ラノ、そんなことできるの…?」

心配そうにラノを見つめるコウに向かって、カナは優しく説明する。

「…藁にもすがってみるもんだよ、コウ…」
「わらにも、すすがる…?」
「ちがうよコウくん。ラノがネコと会話して、ゆうえきなじょうほーを手に入れることができるかどうかを、ためしてみるってこと」

はづきが、キョトンとしているコウに向かって、幼稚園児とは思えないほどの達者な口で、説明し直した。
その説明によって、さらに謎が増えてしまったコウは、困ったように首をかしげてしまう。

「……………ぬぬぬぬ…!」
「ニャー」
「………それで?」
「ニャー」
「…………………あっ、ありがとう!!」
「ニャア」

猫と心を通わせることに成功したのか、ラノは猫を抱きながら、一同のいる場所へ戻ってきた。

「ラノ、せいこうした…?」
「うん!ばっちり教えてくれたよ!!」

種を越えた絆が培われていた。やろうと思えばなんだってできそうな世の中である。

ラノはニッと笑って、情報を伝えた。

「この子、リナに追いかけられて、なんとか逃げたみたいだよ」
「ニャー」

得意気な表情である。猫も、人(ラノ)も。

「で、リナはぁぁぁあああ?!」

カナが慌ててラノの肩を掴んで、激しく前後に揺すった。

「おっ、おちついて!カナさん!!」
「はっ!!ごっ、ごめん!!」

パッと肩を解放されたラノは、少し頬が紅潮していた。ただ、前後に揺さぶられただけ、という訳でも無さそうな表情だった。

「………リナ、神社の奥の、社にいると思うって」

ラノがそう言うと、カナが威勢良く言葉を放った。

「みんな!はやくさがすよ!!」

「カナさん男前!」
「カナちゃんかっこい〜っ」
「おねいちゃん…、早めに帰ろうね…?」

少女のカナが、ここにいる年下男子一同や、同級生であるはずの男子、かづきよりも男前だったことは、その後も語り継がれていくことになる。

Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.8 )
日時: 2014/03/13 18:49
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)

——森の奥にて、リナは、古ぼけた社の階段に腰掛け、呑気に足をぶらぶらさせていた。

みんな、おそいなぁ〜。

猫がいたから、我を失って追っかけていったら迷子になって。
迷子になったら社に集合!と聞いていたため、はるばると森の奥まで来て社を見つけたというのに。

……帰っちゃったのかな?

そんなことを考えていると、向こうの方から、ガサガサと草を掻き分けてこちらに向かってくる音が聞こえてきた。

「リィイイイイイイナァアアアアアアアアアアッッ!!」
「おっ、おねいちゃん、うるさい…!!」
「か、何匹つぶしたかな〜?」
「うわわぁ、転んじゃったよ〜っ」
「げべら?!かづきさんっ!?どんな転び方してるの!?なんで僕まで転んじゃってんの??!!」

カナと、コウと、はづきと、かづきと、ラノの声だった。

「あっ…、リナ、いた…!!」
「!!」

カナは物凄い勢いでリナに駆け寄り、どこにも異常が無い事を確認すると、安堵の溜め息をついた。

「よっ…、よかったぁぁ〜〜〜…!!」

カナが安堵しているのを横目に、はづきは少々呆れながらも、リナに質問した。

「あのさ…、なんで、ここの社に来たの?」
「…え?」
「まつりの、でみせがいっぱい出てた所の近くに、もっとちゃんとした社があったでしょ?あそこだよ、集合場所」

リナは暫くキョトンとしてから、次第にはづきが言った事について理解できたのか、驚いた顔になった。

「ぜんぜん、気づかなかった…!!」


この日の祭りは、その後、皆で平和に楽しんだのであった。

Re: 【合作外伝】変人又は奇人(それと馬鹿)。 ( No.9 )
日時: 2014/03/13 18:48
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)



————


「……あの時はほんとご迷惑をおかけしましたぁぁ…」

一連の流れを思い出したリナは、床に顔を突っ伏して、うつ伏せになっていた。

「…本当だよ、自己中野郎が」
「はづき〜、それはひどいんじゃないかなぁ?」
「…………ッ…!」
「……ぷぷぷっ、ホント…、笑える」

後藤兄弟の間には、はづきが元のペースを崩してしまっていて、もやもやとした空気が流れている。
そんな中、コウが思い出し笑いに耽っていると、そんなコウをリナはうつ伏せになりながらも、顔だけこちらに向けて、キッ、と睨み付けた。

「…シスコン野郎が」
「…は?」
「…ヘタレが」
「…は?」

「「…………潰す………!!」」

そしてまた、コウとリナの喧嘩が始まる。


「ふふふ〜んっ、皆、あの頃とほとんど変わんないねぇ〜っ」

カナが、微笑ましい喧嘩(本人達にとっては潰し合い)の様子を見詰めながら、満足そうに微笑んだ。

「そっ、そうでしょーかねぇ?」

そんなカナの側で、ラノは少しだけ頬を染めながら、ぎこちなく返答した。

「ん?ラノ、どったの?…まっ、まさかっ…、インフル?!」
「おわわっ…!?カッ、カカカッ、カナさん、近いです!近いですって!!」

ラノの頬が赤かったのを見て、カナはラノに熱でもあるのかと心配し、額同士で熱を計ろうとしたのだが、ラノがもっと動揺し、数倍真っ赤になっているのを見ると、大人しく引き下がった。


(………本当、なんにも変わってない…)


ラノは一人、自分とカナの関係を想い、がっくりと項垂れた。