コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 面倒くさがり上等です。 ( No.23 )
- 日時: 2014/07/11 21:32
- 名前: 雨 (ID: 5YqwrR3X)
*4*
ぽかぽかと春の日差しが差し込む廊下。あたしは光と白鳥さんと理科室へと向かっていた。
理科室の扉をがらりと開ける。
「……」
数秒、固まった。
「はぅ、ジョニー、人が来てしまったわ。悲しいけど少し離れなくっちゃ」
女の子らしい高い声が悲しそうに響く。あたしの後ろで同じように固まっていた光が前に出てくる。
「えーっと湯川さん? どうしたの?」
湯川さんというらしい。教卓の上に座り、隣の人影に抱きついて、ほおずりをしていたのは。色素の薄い髪を背中にまっすぐおろしていて、健康的とは言えないほどの細い手足をしている。
伏し目がちのうるんだ目を光に向けた。それから白鳥さん、あたし。
「佐伯さん……お願い。もう少しこのままでいさせて。ジョニーとまだ一緒にいたいの」
「じょ、ジョニー」
あっけにとられていた白鳥さんがつぶやく。やめろ。こういう人は、こっちが反応すると自分の世界にどんどん入っていく。
「ええ。ジョニー・ウェーラヴィッチェデラウット」
なんて?
「素敵でしょう、わたしの彼氏」
…………さすがにもう言ってもいいだろうか。
人体模型ですけど。人体模型ですけど。ジョニー、人間じゃないの分かってるか。
「上野さん、そんなにジョニーを見つめて、まさか……! ジョニーは渡さないわ」
そんな内蔵オープンにした方けっこうです。どうぞしっかり持ってて。
なんで授業がもうすぐ始まるのに、誰も来ないんだと思って時計を見上げる。ジョニーとか興味無い。
と、白鳥さんがぽつりとつぶやいた。
「ジョニーさんには申し訳ないですけど、人体模型って少し怖いですよね。学校の怪談にもよく出てきますし」
人体模型にさん付けする必要あるか。
「やめて! 白鳥さんまでジョニーを誤解するのは。ジョニーをいじめないで」
「あ、でも二人で学校の怪談を確かめに行くのって、いいシチュエーションですよね。人体模型も、ムードの盛り上げ役してくださいますし。捨てたものじゃないです」
「そうよ。ジョニーは昔、この理科室にいたキャサリンという子と、夜のデートをしていたの」
「数々の恐怖をくぐり抜けて深まる愛……」
「そう、そうなの。ジョニーは愛を深めていただけ。なのに怖がられるなんてジョニーがかわいそう」
なんの会話だ。かみ合ってるのかかみ合ってないのか。
しらっとした目で、なぜがほおをピンクに染めた二人を見つめる。