コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 面倒くさがり上等です。 ( No.5 )
- 日時: 2014/07/17 21:56
- 名前: 雨 (ID: 5YqwrR3X)
「もう一人、男子………?」
「そ、闇駆幻牙くん」
「……ヤミガケ、ゲンガ?」
なんだその変わった名前。
「闇を駆ける幻の牙……。俺の名だ」
「ぅお」
突然後ろから湧いて出てきた男子に、軽く身を引く。
眼帯をしていて、黒い長髪からのぞいた耳には、ピアスがゴテゴテと付いている。前髪もうっとおしく長い。
「闇駆さん。ちょうど話してたんですよ」
驚く様子も無く、白鳥さんがふわりと微笑んだ。
「そうか……。最近、また疼くようになってな……、外に出ていた」
眼帯をした右目をおさえて、ふっと口元をゆるめる。そんな闇駆に、あたしの肩に手を置いた光が愛想良く言った。
「闇駆くん、この子、女子のクラス委員の上野沙歩。ーーって、知ってるか」
いいや、と首を振った闇駆が、リングのピアスを指ではじく。軽い金属音がした。動作がいちいちうざい。
「外界からメッセージを受け取っていて、聞いていなかった。そうか、お前が……。よろしく頼む」
手を差し出されたけど、目をそらす事でスルー。
「沙歩」
光と白鳥さんに非難の目で見られたけど、勘弁して。面倒事になる予感しかしない。
「あぁ、かまわない」
あっさり右手を戻して言った闇駆。あ、意外と大丈夫かも……
「お前も闇の住人なのか……。他言はしないが、誰かに触れられるように、魔封道具ぐらい付けておいた方がいい」
誰が闇の住人だ。人を勝手に中二設定にするな。
「俺の場合、コイツは不覚にも敵に付けられた物なんだがな……。魔封術を得意とするヤツで、俺でさえ無効果できずにこのザマ……。知ってるんだろ?」
何を?
「クライムという組織の事だ……。今や外界の犯罪は、クライムによるものがほとんど。こちらの世界にまでその影響が及び出した。お前も、敵なら容赦はしないぜ……」
あたしが黙っているのをいい事に、ぐだぐだと魔封術使いがどうたら、この眼帯がどうたら、自分の力がどうたら、クライムがどうたらーー。
光と白鳥さんはいつのまにかいなくなってるし。
あぁ、面倒くさい。
心の中でつぶやいて、闇駆のピアスに手をのばす。魔封道具とやららしいので、取ればショックで少しは黙るんじゃないだろうか。中二設定話を鬱々と喋るのに夢中で、本人はまったく気付いていない。
ピアスは穴をあけているわけではなく、マグネットピアスだった。これだけカッコつけといて少し呆れる。
ーーとりゃ。
ピアスを取ると、闇駆が一瞬にして固まった。明らかに「しまった」って顔。
カツン、と耳の裏のマグネットが床に落ちた。