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- Re: 甘美な果実〜微かな吐息〜【短編集】 ( No.30 )
- 日時: 2014/04/29 20:18
- 名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)
「君にかまってほしい」
「ねえ、離れて、雫」
「嫌だ」
さっきから、何回このやり取りを繰り返しただろう。
私は、足を伸ばして座った体勢でゲームをする翔太に背中から抱きついている。
折角遊びに来たのに、先程から目の前の敵を倒すことに夢中だ。HPが無くなって、ゲームオーバーになってしまえばいい。もっと言えば、セーブするのを忘れていてゲームなんてするやる気が無くなってしまえばいいのに。
「ねえ」
「うー?」
「ねえってば!」
「何? もうすぐボス倒せそうなんだから黙ってて?」
私よりボスの方が大切なのか!
「かまってよ!」
「あーうん、後でね」
「今かまえ馬鹿!」
ついイライラしてしまい、翔太の背中に頭をぶつける。このままボタンを押し間違えてしまえばいい、という願いを込めて。
「だから、もう少し待っててくれればたくさん可愛がってあげるって。いい子にしてないと、かまってなんて上げないよ?」
「……ずるい」
「雫はあと五分待ってればいいだけ」
翔太にとっての五分は私にとっては一時間だよ、と言いたくなったが、結局言えなかった。
毎回こうなのだ。いつも私より一枚上手で、何でも簡単にやってしまう翔太。翔太と会うたびにドキドキしたり、些細なことで浮かれたり沈んだりしている私が馬鹿みたいだ。
それでも、
「……翔太」
「ん?」
「好き」
「うん、知ってる。俺も」
結局、この言葉を言ってしまうんだ。
翔太も自分と同じ気持ちなんだって分かって安心できる。
「翔太、それ貸して」
そう言いながら翔太の手にあるゲーム機を指差す。
「私もやる」
「……え?」
その時、ゲーム機の画面に「クリア」の文字が浮かんだ。私は翔太の手からゲーム機を抜き取り、セーブボタンを押してからボスに戦いを申し込む。
翔太がゲームをやっていると、私もやりたくなってしまう。もう「かまってほしい」なんて思いが消えてしまうくらいに。
「……俺は可愛がる気満々だったんだけど」
翔太が何か呟いたようだが、声が小さすぎるのとゲームの音で聞こえなかった。
「何か言った!?」
「……何でもないです」
私は、翔太のように夢中になって目の前の敵を倒すことに目を輝かせた。
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*高橋雫 Shizuku Takahashi
*安藤翔太 Syota Ando
結局一枚上手なのは雫だよって話。
すごくどうでもいいリア充の話。
でも、かまってほしい! ていう思いは皆様にもあるのではないかな……と思っています
(勝手にですみません汗)