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Re: 甘美な果実〜微かな吐息〜【短編集】【9/13更新】 ( No.78 )
日時: 2014/09/14 13:33
名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)

「儚くて、恋しくて」

 貴方の家に行く途中、ずっとわくわくしていた気持ちはどこに行ってしまったのかしら。


「穂波、俺たちは一緒にいても上手くいかないよ」
「そ、んなことないっ……! 昨日まで、淳だって笑ってたじゃない」
「ぎこちない笑顔を向けられて穂波は苦しくなかったのか?」
「っ……!」

 淳は辛そうで苦しむような表情を見せて、私に言い放った。——そんな演技を私に見せて、どうしたいの?

「穂波のためなら、俺は穂波を手放すよ」

 そう、そんなことを言うの。
 私のため、というのなら手放さないで。一生鎖にでもつないで縛り付けておいてくれればいいのに。

「……私より好きな人ができたの?」
「違う。それは……ない」

 そんな目を泳がせて嘘をついているつもりなの?
 淳のそんな嘘にも気付けないくらいに私が貴方を愛していないことになっているの?

 なんて男なのかしら。
 最低で、醜くて穢れている獣め。

 私のためと嘘をついてあの子のもとへ行くのね。ああ、嫌な人。

「そう。じゃあ、さよなら」

 それなら私も貴方のためにさよならを告げてあげる。
 あの子のもとへ行く途中に貴方が愛に飢えて餓死してしまえばいい。それほど憎むくらい、貴方を愛していたのに。

 なんて儚い恋なのかしら。






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*近藤穂波 Honami Kondo
*浪川淳 Jun Namikawa

 うん、なんか愛に飢えた女の話です。
 どっちも面倒くさいキャラというか、穢れた獣のようですね。

 テーマ「別れ」