コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ( 4 ) ( No.7 )
- 日時: 2014/02/28 21:36
- 名前: ( ノール ) ◆elRWqcFdQI (ID: qNIh9ax1)
( 4 )
青林と一緒に家へ帰った。
「ただいまー」
青林が門を開けてくれ、私はお礼を言い門を潜(くぐ)る。さりげなくてホント紳士だ。絶対モテそうなのに妻子はおらず独身らしい。そういえば他の皆は女性関係とかそういうの激しいってよく聞くけど、青林さんは聞いた事無い。そういうの興味無さそうだし。
「お帰りなさいませお嬢!」
「青さんと一緒だったんですかい」
「そうだよ」
青林は組の皆に『青さん』と慕われている。流石3代目の右腕。組の皆は「青さんが一緒なら安心だぁ」と言っている。それだけ信頼されているって事だろう。
「遅いからお嬢、また痴漢に遭ったのかと思いましたぜ」
「ちょ乾さん」
笑いながら茶化してきたのは乾。そんな頻繁に遭いませんから。と言うか、大きな声で言わないで、お父さんに聞こえちゃうから。「お嬢綺麗っすからねぇ。危ねぇでさぁ」と乾が言う。綺麗とか照れるわ。
「寧ろお前が危ないな」
「ちょっ、ヒデェっすよ青さん」
サラッと言う青林にすかさず否定を入れる乾。私もそれに乗って「えぇー怖ーい」と言うと「そんな事無ぇっすからお嬢!」と慌てる乾。実に面白い。そんな様を見て私と、青林は静かに笑う。
「んな事より、ソレ何ですかぃ?」
話を逸らすかの様に、乾は青林が両手で持っている大量の袋を指差して問う。そういや青林さんずっと持ったままだったね。忘れてたよ。有難う。
「そうだ、コレ皆にお土産なの。パンケーキだよ」
するとその声が聞こえたのか、他の組の皆が「マジッスか!?」「お嬢マジあざっす!」と反応した。一斉に私の方を向いたので少しビビった。強面ばっかなんだから怖いよ……。
パンケーキセットを皆に渡す。列を成し、楽しそうな顔して待っている強面達が滑稽で仕方が無い。私は笑いを堪えながら配った。
皆笑顔で美味しそうに食べてるなぁ……。甘いものは人をも変える。勉強になりました。皆の幸せそうな顔ったらまぁ……面白い。
ふと右の方を見るとガッツリ食べている乾の隣に、一口も食べていない青林の姿が見えた。私はその二人に近寄る。
「青林さんは食べないんですか?」
「青さん甘いの苦手なんすよ」
「あっそうなの?」
初めて聞いた情報だ。青林は甘いものが苦手らしく、食べるのは勿論甘い香りも駄目らしい。……えっなら、さっきハニーメイトで待ってた時、めっちゃ苦だったんじゃ……。と思っていたら、また青林は察したのか「任務ですから」と柔らかく言う。か、カッコイイ……!
「……じゃあ青林さんの、他の人にあげてきますね」
「いえ、食べないとは言ってませんよ?」
「えっ?」
甘いの駄目なんだから食べないんじゃないの……?
「折角お嬢がお土産に買ってきてくれたのですし、食べない訳にはいきませんよ。しかし私は甘いものは苦手ですから、お嬢が食べさせて下さい」
……ん? 今何か聞こえた気がするんだけど気のせいかな? 表情一つ変えずにサラッと言う青林。こういう人だっけ……?
けどまぁ、勿体無いし、減るもんじゃないし、寧ろ増える、と言う事で私は付属のフォークに一口大の大きさのパンケーキを刺し、アーンと青林の口元へとやる。
「……甘いな」
青林はそれを食べると、一言ボソッと言った。少し眉間に皺が寄っている。
「青さんだけズリィっすよ! お嬢! 俺にもやって下せぇ!」
「乾さんも!?」
私達のやり取りを黙って見ていたと思いきや、それが終わるなり乾も大声で頼んできた。30代40代のおじさんに食べさせるとか結構恥ずかしいんだぞコレ。“介護みたい”という言葉は飲み込んだ。
しょうがないな、と仕方無しに乾にもそれをやった。
「っかぁー! お嬢から食べさせてもらうと一段と美味くなるなぁ!」
大喜びする乾に私は「ははは」と苦笑い。そりゃあようござんした。
そんな乾の大声と一部始終を見ていた他の皆が「俺もやって下せえ!」とわらわらとやって来る。
「やっやらないから!」
私は一目散にその場から逃げた。逃げる途中、父に見つかってそれをやらされたのは言うまでも無い。
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