コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

( 6 ) ( No.13 )
日時: 2014/03/12 01:51
名前: ( ノール ) ◆elRWqcFdQI (ID: qNIh9ax1)



( 6 )




 学校が終わり家へ帰る。何やら中が騒がしい。何だろうと思いながら「ただいまー」と門を開けた。

「おぉ! お嬢おかえりなさいませ!」
「ただいま。どうしたの?」

 出迎えてくれた組の人にどうしたのかと問う。

「それがですねえ、平賀組の大将とその若大将がいらっしゃってるんですがね」
「翔樹(しょうき)君!」

 “平賀組”。それは八柳組の傘下の1つ、テキ屋系任侠一家の平賀組。組長は平賀 草吉(ひらが そうきち)。その息子が平賀 翔樹。幼い頃よく遊んでいた男の子だ。私の後に付いてきたり真似したり、と可愛い子だったなぁ。
 その2人は父の秀一に呼ばれてやって来てるらしい。私は驚いた。と言うのも、ここ何年か、もしくは数十年以来会っていない。

「それでですねえ、大将と若大将が何やら揉めてましてねえ」
「えっ何で?」
「さあ? あっしにもさっぱりで」

 揉め事? 何だろう……。兎に角私は制服のまま二人と秀一が居る客間へと向かった。
 客間に近付くにつれてだんだんと騒ぎ声が大きくなる。

「ウッセー! 俺はゼッテェ組なんか継がねえからな!」

 襖に手を掛けたその時、中から大きな怒鳴り声がした。そしてバァンと襖が勢い良く開く。私は反射的に襖に掛けていた手を引っ込める。危なっ。
 目の前にいる金髪の背の高い男性と目が合った。え、この人もしかして……。

「しょ、翔樹君?」
「……螢、お嬢か?」

 目の前の男性、金髪でドクロやら何やらのシルバーアクセサリーを身に着けて、如何にもヤンキーっぽい人物こそ、私と昔遊んでいた可愛い翔樹だという。……時の流れって怖いね…………。

「う、うん……。えっと、久し振り?」
「そうっすね。久し振りっすね」

 何ともぎこちない挨拶。昔はこんな喋り方じゃなかったのにな。

「おお、これはこれは、螢お嬢。お久し振りですな」
「あっはい。お久し振りです、草吉さん」
「螢帰ってたのか。中に入ってきなさい。翔樹もだ」
「あ、はい」
「っす」

 秀一に言われ、私は渋々、翔樹は渋々嫌々中に入った。

 さて、どうしたものか。中に入ったはいいが、この何とも言えない圧迫感が堪らなく居心地が悪い。数分間誰一人喋らない。私がえっと、と口を開きかけた時、翔樹が静かに口を開いた。

「俺、継がねえから」

 何を、と思ったがすぐに解った。多分平賀組の4代目の事だろう。

「手前ぇ何言ってやがんだ。手前が継がなくて誰が継ぐってんだ」
「他の組の奴らがいんだろ。そいつ等に継がせろよ。俺はゼッテェ継がね」

 また言い合いになってきたので秀一が止め、この話は一旦置いとく事にした。
 でもどうしたんだろう。昔は「おれ、大きくなったら平賀組の4代目になるんだ!」とか言ってたのに。何の心変わりなのだろう。

 話が終わると、翔樹は早々と客間を出て行った。




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