コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 飛鳥予知夢 ( No.2 )
- 日時: 2014/02/26 06:06
- 名前: memory (ID: BT8pEM9W)
3、 美濃で
飛鳥と衣織が家から旅立った、朝。
2人は、美濃(今の岐阜県がある場所)へ向かう。
衣織の父の残した巻物を1つ見つけ、そこにだいだいの勾玉と黄緑の勾玉が落とされた位置が記されていたからだ。2つとも、美濃に落ちたらしい。
ただ、ひたすら歩くだけ。
「飛鳥ぁ。ちょっと休憩しない?」
衣織は甘えた声で飛鳥を誘うが、頑固な飛鳥には無効だ。
「だめ。我慢したら?衣織、そんなでよくひとり旅が出来たな。」
「何よぉー。いいじゃない、少しくらい。」
それでも衣織はちゃんと飛鳥について来る。
そんなことを喋りながら、今日から美濃に行く。
「世界を旅するより、楽なんだから。この速さで歩けば、明日には着くよ。」
飛鳥は、ふくれた衣織を励まし、進む。
しばらくすれば、衣織の機嫌は良くなっていた。
2日目、飛鳥と衣織は早くも美濃に着くことが出来た。
「……着いた……、ね。飛鳥ぁ……。うぅぅ……。」
飛鳥の厳しい旅についてきた衣織。
自分が飛鳥を引っ張っていく側なのに、すでに立場逆転している。
「あ。でも、ほんとはわたしが飛鳥についてこさせなきゃいけないのよねぇ。ふふーん。」
何か、たくらんでいるよう。
衣織の企みに気づかない飛鳥は、にこにこして歩いている。
「ふぁあ。着いたなあ。」
そのとき、後ろから声がした。男だ。
「おい、おーい。そこのー、っと、誰だか知らねえけど……、止まれっ。」
今飛鳥たちが歩いている道は、2人と男以外、誰もいない。
明らかに、飛鳥たちを呼んでいる。
すると飛鳥が男にこたえる。
「なんでしょうか?」
そんな飛鳥を、衣織が止める。
「わたしにまかせてよっ!」
衣織は男に駆け寄ると、色々と質問する。
「なんですか?わたしたちに用があるのでしょう?あなた、何者?」
「んー。おれか?おれは、美濃生まれ美濃育ちの美里利琳。用があるっつーか。聞きてーことよ。」
琳は、きれいな黒髪を目と耳の間の高さで後ろで結び、その髪を二の腕までのばしている。
「それで、わたしたちに聞きたいことってなんですか?」
衣織は、琳の機嫌を損ねないように、慎重に聞く。
「あ、ああ。んーと、こんなの、持ってね?」
琳は、首にかけていた紐をとる。
そこに、通してあったのは、だいだいの勾玉。
つやつやとした表面と、その輝きは、飛鳥のものとそっくりだ。
「……うそ。だいだいの勾玉だし……。ちょ、飛鳥っ!!」
飛鳥も琳の勾玉を見て、目を見開く。
「これは、だいだいの勾玉では……!?」
琳は自分の持っているものを分かってもらえ、にこにこして飛鳥に聞く。
「え?これ、わかる?あんた、持ってんの!?」
「持ってます!!ぼくのは黄色ですけどね。」
するとひょいと衣織は琳の勾玉を取り上げる。
琳はそれに気付いて慌てる。
「ちょ、おい。返せ、こら。」
「待って。少しだけだから。」
衣織は琳に背を向けて、太陽に透かしてみせたり、表面を観察したりした。
そして、にっこり笑ってうなずく。
「うん、これは本物。」
琳に勾玉を返そうと振り向いたそのとき。
琳は怒りに燃えためで衣織を睨んでいた。
飛鳥と衣織は、琳がもっと恐ろしいことに気づいた。
琳の足元から、火が燃えていた。
「ひぃ……。火っ!?」
2人同時につぶやいた。
その火はほんの琳の膝下にもおよばなかったが、琳の周りを囲み、赤く燃え盛っていた。
「早く、返せ。おれの勾玉!!」
そして恐ろしいような目で衣織を睨む。
衣織は勾玉を投げるようにして琳に返すと、飛鳥の後ろに隠れた。
そして、つぶやく。
「琳さんは……、完璧な火の神だよ……!」
飛鳥はそれに答えるようにしてうなずいた。
ふと見れば、琳はもういなくなっていた。
道には、燃えていた火の跡はない。
琳の行く先も、いる場所も知らない2人は、また、琳と新しい神を探しに、日本中を歩きまわることになる。