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Re: 飛鳥予知夢 ( No.5 )
日時: 2014/02/27 06:02
名前: memory (ID: BT8pEM9W)


5、 逃げる火の神


琳は森の外へと走る、走る。
「よっしゃ、外だ。森から出れるぞ。」
走る速度は、どんどん増す。
そして、森から出る、一歩前。
人が森へと入ろうとしていたらしく、ぶつかった。

「いってー!!わりぃ。ーって、あんたらか。」
ぶつかった相手は、飛鳥。となりには、衣織もいる。
「琳さん!?探してたんですよ!?まさか、本当にこの森にいたとは……!!」
飛鳥は感動の笑みを漏らすが、琳はそれどころではない。
星羅から、逃げているのだ。
「まさか、お前らも、星羅っつー野郎の仲間か!?挟み撃ちかよ。けっ、相変わらず汚ぇ奴。」
琳は飛鳥と衣織を睨むと、さっさと走り去ってしまった。

取り残された2人は、呆然と琳の後ろ姿を見送った。
「星羅って、誰なのかなぁ。」
「さぁ……?」
少したつと、1人の少年が刀を手に、走ってきた。
息が上がり、回りを見渡している。
「ちょっと、いいかな。さっき、人が通らなかった?」
星羅だ。声に迫力があり、分かりやすい。

「通った、ね。飛鳥。」
衣織は、まだ琳の走っていった方向を見つめていた。
「あぁ、通った。」
飛鳥といったら、もうあっけにとられている。
琳を、また、逃がしたから。
さらに、自分と衣織が敵だと思われているから。

「ねぇ、あいつを探して、ここまで来たんだよね?ぼく、手伝ってあげる。決着も、白黒つけたいしね!」
星羅は、そう言って刀をしまい、次に、自分の名を名のった。
「ぼく、百合原星羅っていうの。よろしくね!」
飛鳥と衣織は顔を合わせると、うなずいた。
「一緒に、探しましょう!」
星羅が白黒つけると言ったときは迷ったが、その前に琳を仲間につければいいのだ。

星羅は飛鳥と衣織の顔を覗き込むようにして、聞く。
「あなたたちは、何て言うの?」
最初、その意味がわからなかった。
「え、なにが……?」
と、聞いてしまった。
すると星羅はクスッと笑う。
「な、ま、え。分からなかった?ごめんね。」
「あ、名前、ねぇ……。」

「名前、何て言うの?」
星羅は、微笑みを絶やすことなく、聞く。
「ぼくは、天乃目飛鳥、こちらの少女は相花月衣織さんです。」
「へぇ。飛鳥さんと、衣織さんかぁ。」
星羅が、体を揺らしたとき。
星羅の着物で、なにかが光った。
あんまりそれが眩しくて、飛鳥は聞いてみた。
「今、なにが光ったんですか、星羅さん。」
星羅は、自分の着物を見回して、にっこりした。

「たぶん……、これのことかな。」
そう言って、ひょいとつまみ上げたのは、勾玉。
黄緑に光り、透き通っている。
「うぇえ!?月の神、出たぁー!!!」
火の神、琳が逃げたと思ったら、月の神、星羅が現れたとは、とんだ奇跡である。
本人は、何のことやら、分からない様子。
「どういうこと……?」