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Re: 飛鳥予知夢 ( No.8 )
日時: 2014/03/01 09:49
名前: memory (ID: BT8pEM9W)


6 、 月の神


星羅は、驚きの声をあげる。
「なんか、ぼく、すごいことになってる……?」
「す、すごいどころじゃないから!!」
衣織は興奮ぎみに言う。
星羅はまだ、よく分からずにいる様子だ。
すると飛鳥が、星羅に説明し始める。

「いいですか?星羅さん。ぼくや星羅さん、さっき逃げた美里利琳さんのようにこの勾玉をもつ人は、この日本の神様なんです。」
星羅は、可愛らしい顔をしかめながら、聞いていた。
衣織は、琳を探しているのか、辺りを見渡している。
「それで、勾玉の色によって神様が違うんです。……例えば、ぼくだったら黄の勾玉を持ち、雷の神です。星羅さんは黄緑の勾玉ですから、月の神なんです。」
他にも、神は9人いること、自分達は9人の神という不思議な縁で結ばれていること……。
時間をかけ、丁寧に説明した。
飛鳥の話が終わる頃には、もう夕日が空に昇っていた。

飛鳥、衣織、星羅の3人は、近くの宿へ向かう。
「ぼくたちの運命って、すごいね。ぼく、感動しちゃった!だって、こんな素敵な仲間と出会えたんだもの。」
星羅は顔を輝かせながら、歩く。
「やっぱり、見つからない。美里利琳。」
衣織はまだ、琳を探す希望があるらしい。
そんな衣織を、飛鳥が軽く睨み付ける。
「琳さんは、衣織より2つ年上なんだ。さんをつけなきゃ駄目だろ?」
「はぁーい。しょうがないなぁ!」
衣織も、飛鳥を睨む。

2人のにらみ合いを見ていた星羅は、急にクスリと笑い出した。
「ふふっ。衣織さんと飛鳥さんて、本当仲良しだよねっ。」
「なっ……!?そ、そんなこと!!」
2人同時に言うと、星羅の笑い声はもっと大きくなる。
「あははっ。やっぱ、いいねー。仲良し!」
星羅の笑いが収まると、今度は真面目に歩きだす。
だが見れば、すぐ近くに宿が見えていた。

宿につくと、たくましい若旦那が出迎えてくれた。
「ようっ。旅人かい?お疲れだろ?すぐ部屋に案内するからよっ。」
だいぶ明るい若旦那のようだ。
3人は部屋にはいると、どっと疲れが出てくるのがわかった。
今までほとんど睡眠をとらずにいた飛鳥と衣織にとっては、夢のようである。
「うぅー。疲れたよぉ。」
ここでは、辛い旅のことも、逃げた琳のことも忘れられるくらい、のんびりできた。

しばらくすると、さっきの若旦那が部屋の外から声をかけてきた。
「疲れてるとこ、悪いけど……、かゆができたぞ?食うか?食えれば、食えよ。」
若旦那が部屋に上がり、かゆを置く。
そのときに、星羅の着物についた黄緑の勾玉が見えたようで、星羅に聞く。
「ん?おめぇ、なんで、これ持ってる?」
「へ?この、勾玉のこと?」
星羅は自分の勾玉を指差す。

若旦那は、大きくうなずくと、語り始めた。
「それ、おれの弟も持ってる。弟のは、赤かったけどな。その勾玉はよ、弟が七つではじめて川に行ったとき、拾ったんだとさ。それから弟はよぉ、その勾玉が気に入って、いつも身に付けてたけど、他にも持ってる奴がいたとはなぁ!!」
弟のことを嬉しそうに話している兄というのは、微笑ましいことだ。
よっぽど、弟思いなのだろう。
だが、飛鳥たち3人には、とてもすごい情報だ。

ー太陽の神の居場所が分かるかもしれない。
飛鳥は、若旦那がいい情報をくれるようにと願いながらきく。
「あの、ぼくたち、その勾玉をもつ人を探してるんですけど、あなたの弟さんってどこに住んでらっしゃいますか?」
すると若旦那、顔を輝かせた。
「探してんのか!!おめぇら、いい奴だから、教えてやるっ。今は、近江にいるぜ。名は、坂野結城だ。これをたよりに探してくれ!」

短い言葉だが、とても有力な情報を得ることができ、3人は満足である。
赤の勾玉をもつ、太陽の神……、坂野結城は、近江(滋賀県)にいるという。
よい情報を得たが、明日からはまた、辛い旅となりそうだ。