コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 飛鳥予知夢 ( No.22 )
- 日時: 2014/07/10 17:31
- 名前: memory (ID: sp6Br4Ue)
14、地の神
飛鳥と星羅は、夕暮れ時、新たなる神を探しに、備中(岡山県)へと向かう。
今は、備後(広島県)にいるが。
飛鳥の予知夢は前のように戻ったが、新しい神が増えれば、また正夢が続くだろう。
飛鳥は複雑な思いを抱きながら、星羅と共に歩いていた。
「飛鳥さん……、僕も、最近……おかしいんだ。」
追突に、星羅が飛鳥に話しかける。
その話の内容に、飛鳥は反応する。
「どうおかしいんですかっ?」
もしかして、星羅にも能力が……?
星羅は、コクリ、とうなずいて、飛鳥に話し始めた。
「僕がおかしいというか……、あの、僕って、月の神様でしょう?それで、最近……月が、おかしいの。昔よりとても明るくて、僕、月が出てる間は眠れない時があるの。」
悲しそうに目をふせる星羅を見て、飛鳥は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
なにせ、前は自分の予知夢のことで皆を困らせてしまったというのに、星羅には一人で悩みを抱えさせてしまったのだから。
きっと、これも、星羅自身が神という自覚を持ち始め、力がついてきたからだろう。
だが、飛鳥はふと思った。
なら、なぜ美里利琳は自分が神という自覚もないのに火を出せたのだろう、と。
飛鳥は琳のことを頭の隅において、星羅と向き直った。
「星羅さん。きっと、これは、神としての力がついてきたからですよ。時が経てば、月の光を操れるようになります。」
でも、星羅が月を操れるようになるまで、どれだけ時間がかかるだろうか。
「どうすれば、月を操れるようになるかなぁ。」
星羅は真っ赤に染まる夕日を見上げながら、震えた声で呟いた。
朝。
昨夜はずっと歩き続け、飛鳥と星羅は備中に着くことができた。
備中には、頼りになる占い師がいる、と聞き、星羅の悩みと勾玉を持った人がいないかを聞くことにした。
「占い師さんが色々教えてくれればいいけどね。」
星羅は、昨日とは別人のように明るい声で、飛鳥に話しかけていた。
飛鳥も密かに、占い師が星羅の悩みを解いてくれる、と信じていた。
「そうですね。あ!あの人が、占い師、じゃ……ないですかね?」
飛鳥が、質の良さそうな服を着た、背の高い人を指差す。
「そうかも……!行ってみよう!」
二人は、その人のもとへ駆けていった。
「すみません!少しいいですか?」
すると、大木の前に立っていた長身の男が、ゆっくりと振り向いた。
透き通るような目を向けられ、二人は少し焦りながらも、用件を伝える。
「あの……、この村に、綺麗な色をした勾玉を持っている人はいませんか?このようなものです。」
星羅は自分の首にかかった黄緑の勾玉を見せる。
男は口元だけ小さく笑い、口を開いた。
「お前達……、僕が占い師だということを知っていたのか?」
いや、勘できました、と飛鳥が言い、星羅も頷く。
「君達に興味を持った。教えてやろう。そのような勾玉なら、僕が持っている。黒いが、綺麗だと言えないことはない。」
占い師は、懐から巾着袋を出すと、その中の勾玉を見せた。
「綺麗、ですね……!」
飛鳥は思わず息を飲む。
星羅は、新しい神と出会えて、目を輝かせている。
頼りになる者がこれから仲間だと思うと、心強い。
「占い師さん!貴方の名前は……?」
この占い師は、美川 時臣(みかわ ときおみ)というらしい。
二人は時臣に神のことなどを話すと、お願いをした。
「僕らと一緒に、旅をしてくださいっ!」
すると時臣は小さく微笑み、コクリと頷いた。
「ああ。困ったことがあれば力にもなろう。」
その後、三人は美作(岡山県)へ行き、但馬(兵庫県)で二日間、休むことにした。
一方、衣織、結城、東の三人は、出雲から近江に戻り、越前(福井県)に着いていた。