コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 飛鳥予知夢 ( No.23 )
- 日時: 2014/08/05 20:57
- 名前: memory (ID: sp6Br4Ue)
15、怪奇現象……?
「最近、この辺りで不思議なことが起きているらしい」
追突に、時臣はそう言った。
「不思議なこと……?」
普段聞きなれぬ言葉に、飛鳥と星羅は顔をしかめる。
それと同時に、村を遠くまで見渡してみる……が、特になにも変わったことはない。
「もしかして、これからこの丹後に異変が?」
星羅は顎に手をあて、思いついたかのように呟いた。
時臣は冷めた顔で「違うな」と言うと、すたすたと歩きだす。
しかし、特に情報収集が上手いわけでもない飛鳥等にとっては、この丹後(京都府)に何が起きているのかわからないのは明らかだ。
「はっきり教えてくださいよー、時臣さん!」
星羅が不満そうに頬を膨らませると、時臣は横目で星羅を見ながら言う。
「占い師というものはこういうものだ。……まぁ、教えないこともないが」
それから、歩きながら時臣は口を開いた。
「最近、この村では火が出るらしい」
そして、その火はついたり消えたりが繰り返され、自然に起きたものではないらしいと時臣は手短に話した。
「不思議、ですね」
飛鳥が思わず感想をもらす。
確かに、不思議だ。
勝手に、火がついたり消えたりし、それは自然に起きているものではないのだから。
時臣の話は終わってはいなかった。
「仲間ではないのか?」
飛鳥と星羅に送る冷たい視線を、前に向けながら言った。
その言葉は、二人の頭でリピートされる。
「わかりました……!」
そう顔を輝かせたのは、飛鳥だ。
飛鳥は、美濃(岐阜県)で見つけた、火の神_______そう、美里利琳を思い出したのだ。
「誰その人……?」
眉間にシワを寄せ唸る星羅に、飛鳥は丁寧に教える。
「星羅さんも会ったことありますよ。ほら、森の中ですこし争いをした方です。素早くて僕らも逃げられましたが……。覚えていますか?」
すると星羅は納得したように「あぁ!」と声をあげると、頷いた。
だがまさか、琳が丹後にいたとは……!
飛鳥は二人に、琳のことを詳しく話す。
時臣が「是非話して欲しい」と言ったからでもあるが、飛鳥が琳の特徴や危険さを二人に知ってもらいたかったからでもある。
「それに、琳さんは少し厄介です。僕は二度会いましたし、彼に良からぬ誤解を招かれています。星羅さんとも争いをしました。琳さんが僕らのことを覚えていれば、警戒心も強いでしょう。この状態で彼に近づくのは相当困難だと思います」
飛鳥は自分の意見まで述べ終えると、二人を見回した。
星羅は相づちをうちながら真剣に聞いていた様子が伝わってくる。
一方の時臣は、少し楽しんでいるように微笑んでいた。
「……お前達は完全に敵意を持たれているんだな?」
ようやく、時臣が口を開いた。
「おそらく。僕は二度目会ったとき、顔を覚えられていましたね」
星羅は飛鳥の言葉に目を見開く。
きっと、自分にはそんな記憶力がないと思ったのだろう。
だがそれと裏腹に、時臣は面白いとでも言いたげな顔つきでまっすぐ前を向いた。
「……敵意は持たれているが、やることはひとつだろう?」
時臣のいつもより低い声に、飛鳥と星羅は同時に頷く。
「琳さんを、仲間にします」
すると時臣は満足そうに鼻で笑う。
「目的地は、美濃だ。奴は今日、美濃に帰るだろう」
かなり忙しい旅だが、その間にある、新しい仲間との交流、徐々にわいてくる親近感が嬉しいもの。
飛鳥達はそれを求め、旅をするのだ。