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- Re: 魔法使いの青春理論【ひたすらバトル】 ( No.105 )
- 日時: 2014/04/23 20:53
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: TaF97fNV)
36.
ヒイラギのその言葉に、カシワギはしばらく目を見開いていたが、
やがて狂ったように高笑いした。
「ハハハハハッ!それこそ不可能なことだよ!
この屋敷の全てのドアは鍵魔法で閉鎖されているから転移魔法は使えない!
壁も硬い大理石で出来ているから破るのは至難の業さ!」
「鍵魔法…!」
私は狼狽えたが、ヒイラギは…笑い返した。
「ふははっ…そっか。だがよ、そんなの…」
そして、緑の目を光らせ、カシワギを睨み付けた。
「不可能だって誰が決めた?」
その威圧感に、カシワギが身を竦めた。
ヒイラギは大きく息を吸って…
「地を揺るがすは破壊の叫び——うあああああああああああああ!!」
満月に向かって吼える狼の如く、咆哮した。
それが響き渡った直後、部屋の壁が、天井が——
ガタガタと音をたて、崩れ落ちていく…!
「な…んだと…!?」
驚愕するカシワギ。
その間にも破壊は続き、三階ほど上まで吹き抜けの空間が出来た。
咆哮をやめたヒイラギが、勝ち気な笑みを浮かべて言った。
「ほら、できちまったよ。あとは地上階の壁を壊して警察を呼ぶだけだ」
「ひっ…ヒイッ…」
カシワギは怖じ気づいたかと思うと、部屋から逃げだそうと駆け出した。
「待ちなさいっ!」
すかさず光の鎖で捕らえ、拘束する。
それから、ヒイラギに頼んだ。
「ヒイラギ、壁は私に壊させて」
彼は少し驚いたような表情をしたが、やがて笑顔を見せて頷いた。
「わかった。その前に、一つ言っていいか?」
「うん、何?」
すると、ヒイラギは少し顔を赤くしてから、強気な口調で言った。
「おっ…俺を、お前のギルドに入れてくれ——ツバキ」
「…!もちろん!」
私が手を差し出すと、ヒイラギは躊躇いがちに握り、
「じゃあ一気に地上階まで上がるぜ!」
獣人特有の跳躍力でジャンプした。
吹き抜けのフロアを通り過ぎ、地上階に降り立つ。
そこはカシワギ邸の玄関だった。
玄関のドアには鍵魔法がかかっているため壊せない。
そのことをふまえ、私はドア横の壁を破壊することにした。
「光神ルー!」
神の名を唱え、杖の先端を壁に向ける。
放つんだ——大理石を撃ち破る、強い魔法を!
「貫け——月光ストリーム!」
月みたいに青白い光の嵐を放つ。
しかし、まだ壁は壊れない。
もっと…もっと強い光を!
「はあああああああああああ!!」
手が痺れる程の魔力を杖に注ぐ。
やがて、ピシリという音がした。
ヒビが入った音だった。
そう気づいた瞬間、ヒビは四方八方に広がり、そして…
ガラガラと崩れる壁の向こうに、昇り始めたばかりの太陽と、
破壊の音をたてる屋敷を驚いて眺めている野次馬が見えた。
「うへぁ!なんでこんなに人がいるのぉ!?」
「あー…俺が叫んだからかな…」
と、その時、声をかけられた。
「ご主人様!」
「ツバキ!」
はっとして後ろを振り向くと、百花繚乱のメンバーが駆け寄ってきていた。
いつもは整った白髪を乱したユリ、足を引きずっているトウ、
お腹をおさえているクレハ、そしてクレハに担がれて目を閉じているナツメ。
全員、かなりのダメージを負っている。
「ちょ、みんな無事!?ってナツメは…!?」
ぐったりしているナツメに駆け寄ると、彼を背負っているクレハが言った。
「魔力を使い尽くして眠っているだけだ。重傷じゃあない」
続けてトウがぼそっと呟く。
「…そういう俺とクレハこそ、ついさっきまで気絶していたがな」
「そうなの!?…でも無事みたいね」
ふぅ、と息をついて、ざわめく野次馬に目を向ける。
「で、私たちがやるべきことは…」
「警察への報告ですね。それならお任せを。証拠は掴みました」
「オレたちも見つけたぜ」
「お手柄!でも…はぁ…忙しくなるなぁ…」
ため息混じりに言ってから、ヒイラギが
おいてけぼりになっていることに気付いた。
「…加入手続きとかはもう少し後になるかもね」
きょとんとしていたヒイラギは、苦笑しながら頷いた。
「…だな」