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Re: 魔法使いの青春理論 ( No.11 )
日時: 2014/03/01 16:35
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)

  04.


 屋敷の食堂では、いつもとは少し違う晩餐が行われていた。

 いつもより量が多い夕食、いつもより賑やかな雰囲気、
 そして、いつもはいない三人の青年。

「これ好きなだけ食っていいの!?」という問いに勿論だと頷くと、
 青年たちはもの凄い速さで平らげていった。

 男子の食べっぷりを久しぶりに見れたのと、場の賑やかさに、
 私は嬉しさを感じていた。

 身体を充分休ませた上、一欠片も残さずに食べた青年たちは、
 体力も魔力もだいぶ回復したようだ。

 食後、青年たちは早速私とユリに頭を下げた。

「助けてくれた上食事までさせてくれてありがとな!」
「あの時は本当死にそうだったからね。命拾いしたよ」
「…どうも」

「元気になってくれて何よりよ。ねぇ、ユリ」
「はい」

 あ、そうだ、と茶髪の青年が思い出したように言った。
「自己紹介が遅れたな。オレはクレハ—紅葉—だ。
 で、ちっちゃいほうがナツメ—棗—、高いほうがトウ—藤—だ」

「ちょっとクレハ、それは禁句だよ!僕の心抉らないで!」
「…」
「ごめんなナツメーあはははは」

 自己紹介だけでこんな賑やかになるなんて、面白い人たちだなぁ。
「私はツバキ。ここを本拠地とするギルド『百花繚乱』のリーダーよ」
「私はユリと申します。以後お見知りおきを」

 自己紹介も済んだところで、本題に入った。
「じゃあ、何があったか説明してくれる?」
 ああ、と頷いて、茶髪の青年ことクレハが話し始めた。

「オレたち、ここから少しだけ離れている地方を拠点とするギルド、
 『レオン』のメンバーだったんだ。
 人数は三十人ほどで、そこそこ名の知れたギルドだった。

 だけど二週間前、以前から敵対していたギルドに壊滅させられたんだ」

「壊滅…!?」
 クレハが頷き、淡い金髪の青年ことナツメが続けた。

「奴らはまずギルドの本拠地を、跡形もなく破壊した。
 本拠地はメンバー全員の家でもあったから、僕らは生活の場を失った。
 そして、次はメンバーを襲ったんだ。

 僕とクレハとトウは、手元にあったわずかな金品を持って
 なんとか逃げられたんだけど、ギルドは再起不可能なほどの被害を被った。
 だから、解散せざるを得なくなったんだ。

 その後、居場所を求めて放浪しながら生活していったのだけど、
 手持ちのお金が底をついてしまった。

 こうなったら森の木の実を食べていくしかないと思って西の森に入った。
 だけど、探している最中にあのウルフと遭遇してしまってね。

 空腹とストレスが溜まった状態でまともに戦えるわけもなく、絶体絶命…
 ってところで、君たちが助けてくれたんだ」

 黒髪の青年ことトウは何も言わなかったが、コクコクと頷いていた。

「そうだったのですか…。それは大変でしたね」
 ユリの言葉を聞きながら、私はあることを思っていた。

 ナツメは「居場所を求めて」いると言った。
 それはギルドを失った彼らは新たなギルドに入ろうとしている、ということ。
 だったら…だったら…

 私は立ち上がり、三人に言った。


「ねぇ、私たちのギルドに入らない?」


 突然のお誘いに三人はぽかんとしていたが、やがてトウが尋ねた。
「…入れてくれるのか」

 私は勿論とばかりに頷く。
「うん!このギルド、一週間前に設立したばかりで、まだ私とユリしかいないの。
 だから、三人が入ってくれたら凄く嬉しいんだ。
 あと、この屋敷の部屋をあげるから、ここで一緒に住もうよ。ね?」

 私が言うと、三人は表情を輝かせて頷いた。
「是非入れてくれ!しっかり稼ぐから!」
「お言葉に甘えさせてもらうよ」

 そんな三人を見て、ユリが微笑みながら言った。
「よかったですね、ご主人様」
「うん、賑やかになりそうね」

 こうして、ギルド「百花繚乱」は五人となったのだった。