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- Re: 【狼男が】魔法使いの青春理論【仲間入り】 ( No.113 )
- 日時: 2014/05/09 20:52
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: PlCYIOtu)
39.
風呂から上がった俺——ヒイラギは、涼風に当たろうとテラスに向かっていた。
それにしても広い風呂場だった。
というか、ここ百花繚乱の本拠地であるこの家自体、結構な豪邸だ。
…そんなことを思いながらテラスに到着する。
だが、そこには先客がいた。
トウだ。
トウは俺に気付くと、はっとしたような表情をして、
少し間をおいてから口を開いた。
「その…さっきは悪かった…」
突然の謝罪にきょとんとしてしまう。
さっきのこと…肘鉄を食らわせたことか。
「ああ、別に怪我とかしてないし、もう気にしてねえよ」
そう言いながら、俺はあることを思い出した。
「それより、聞きたいことがあるんだけど…」
「なんだ?」
しばらく言うのに躊躇ったが、思いきって尋ねた。
「トウってツバキのことが好きなのか?」
ぽかんとしていたトウだが、
「なっ…なっ…!?」
やがて顔を赤く染めて目を見開いた。
この反応、もしや…
胸騒ぎを感じた直後、
「……そ、それで何が悪い」
と返事が返ってきた。
ぶっきらぼうながらも、決意の固まった声で。
次の瞬間、俺はカッとなって口走っていた。
「おっ、俺だってあいつのこと好きなんだからなっ!……あ」
慌てて口元を押さえるがもう遅い。
俺の言葉に、はただぽかんとしていたトウだが、
その目付きがみるみる険しくなっていった。
「…じゃあ俺たちは恋のライバルだな」
確かめるように…いや、ケンカを売るように、トウが訊く。
「…そういうことだ」
負けじと応答する。
しばらく睨み合う。
「…俺は負けない」
トウはそう宣言すると、テラスから立ち去っていった。
「俺だって負けねーよ!」
と言い返しながらも、俺は何だか嬉しいような感情を抱いていた。
生まれて初めてできた、"ライバル"という存在。
——密かに憧れていたもの。
「でも負けねぇからな…」
そう言い聞かせる俺の口元には、少しだけ笑みが刻まれていた。