コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔法使いの青春理論 ( No.18 )
- 日時: 2014/03/03 23:04
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: cSy8Cn7x)
06.
ユリが持ってきた依頼は、大量繁殖した赤ザルの駆除だった。
てなワケで、赤ザルのテリトリーである青樹の森へ向かうことにした。
青樹の森は、西の森より小さいが、危険植物が多く存在する。
場所はここから離れたところにあるため、電車を使っての移動だ。
以前は飛行魔法での移動だったが、今回からは陸移動だ。
交通費がかかってしまうものの、飛行してすぐに着いてしまうのより、
時間をかけて賑やかに行くほうがやはり楽しいものだ。
最寄り駅で降り、早速青樹の森へ足を踏み入れた。
進みながらメンバーに言う。
「今回は三人の実力を知るために全員で依頼をこなすけど、
そんなに大変な依頼じゃなかったら自由に引き受けていいからね」
はーい、と返事をする四人。
「じゃあ早速赤ザルのもとへ…と言っても、どこら辺にいるかは
分からないから、当てずっぽうに進むしかないけどね」
大変そうだなぁ、と呟く私に、ナツメが手を挙げた。
「それなら僕に任せて」
そう言って、ナツメは目を閉じた。
すると、風がそよそよと吹き始めた。
ナツメはしばらくして目を開いた。
「森の中心あたりから鳴き声が聞こえた。おそらくその辺だね」
ユリが尋ねた。
「今のはなにをなさっていたのですか?」
「風が運んでくる音を聞いていたのさ」
そう、ナツメは風の魔法使いなのだ。
風魔法は、威力は中級レベルだが使い易いため、風の魔法使いは多い。
ついでに言っておくと、クレハは火の魔法使いで、トウは魔法武器使いとのこと。
ギルドメンバーになったあの夜、三人はそう言っていた。
「ありがとう、ナツメ。じゃ、行きますか」
私たちは奥へと進んでいった。
…のだが。
歩き始めて五分くらい経ったときのこと。
「うわー、この蔦頑丈そう」
と、太めの蔦に触れてみたその時、
しゅるん、と蔦がひとりでに動き、私の手首に絡まった。
「ふぇ?」
と驚くのも束の間。
その蔦は次々と伸びてきて、腕、胴体、足など、私の身体のいたるところに
巻き付き、そのまま私を持ち上げていった。
「うわああああああああああ!!!」
「ご主人様——っ!?」
「つ、ツバキぃ!それは意思を持つ植物のオバケヅタだ!」
「へぇ、そうなんだ…ってそれより早く助けてえええ!」
私の叫びにユリが飛びかかろうとするが、それより先に動く影があった。
トウだ。
魔法武器使いであるトウは素早く魔法剣を召喚すると、
大きくジャンプして、私に絡まる蔦を薙いだ。
身体に自由が戻り、地面に着地する。
「あっ、ありがとう、トウ」
「…別に」
それだけ言って、トウ剣を戻した。
「おー、ナイスだトウ。ツバキも気を付けろよー。あははは…ん?」
笑いながら数歩進んだクレハが、不意に立ち止まった。
そして足元を見やる。
「何か踏んだような…」
するとすぐ側から、
「グルルル…」
不吉な音を聞き、そちらを向く。
——クレハに尾を踏みつけられているサーベルタイガーがいた。
「ぎゃああああああ!!」
「ねぇなんでクレハはいつもこんなにベタなの!?」
「いつもなんだ…ってそんな場合じゃないよおおおおお!」
そんなこと言ってる間に、サーベルタイガーはゆっくりと起き上がり、
ギラギラとした目で私たちを睨み据えた。