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Re: 魔法使いの青春理論 ( No.19 )
日時: 2014/03/05 06:02
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)

  07.


「とっ、とにかく逃げるわよ!」
 と、私が叫ぶのと同時に、ユリがサーベルタイガーの前に立ち塞がった。

「ご主人様、ここは私にお任せください」
 そう言うと、ユリは右手をタイガーに向けた。
 その親指と人差し指を伸ばし、銃を模した形を作る。

「ロックオン」
 ユリがそう唱えると、タイガーの眉間に青白い魔法陣が浮かび上がった。

 次の瞬間、ユリは地面を踏みしめてタイガーに飛びかかったと思うと、
 魔法陣が出現している眉間を拳で殴り付けた。

 ドゴン、という鈍い音と共に、タイガーが吹っ飛ぶ。
 すでに音もなく撃沈していた。

 ユリのあの技は武力魔法の一つで、ダメージを倍増させるものだ。

 ただただ驚き感心する私たちに、ユリは何でもないかのように言った。
「さあ、行きましょう」


 それからさらに数分進んだ。
「ユリって強いよなー。空も飛べるんだろ?」
「そうそう!自慢のパートナーだよ」
 と、クレハと会話しながら歩いていたその時。

 不意に、首筋に何かもふもふしたような感覚が走った。
 そう、まるで毛虫のような…。

「ひぇああああああああああ!!!!」

 叫びながら、思わずクレハの後ろ襟をひっ掴む。
「ぐえっ!?」

 呼吸困難に陥るクレハに、私は涙目で言った。
「な…な…ななななんかく、首に…首にぃいい…!!」

「っくくく…」

 後ろから、押し殺したような笑い声がした。
 がばっ、と振り向く。
 すると、顔を伏せて肩を震わせているナツメの姿が目に入った。

「な…ナツメ…?」
 すると、ナツメは顔を上げて、右手に持ったものを見せた。

「っははは…!正体はこれだよ!くくっ…!」
 それはネコジャラシだった。
 って、それってつまり…

「そう、僕がくすぐらせたんだ」

「え…ええええええ!?んもおおおおナツメえええ!!」
 恥ずかしくなって叫んでも、ナツメはまだ笑っていた。

「もう、ナツメってば!」
「あはははっ、それにしても…」
 ナツメは一旦笑いをやめると、目を合わせてこう言った。

「君のその反応、堪らなく可愛いね」

「——っ!?」
 その瞳と言葉に引き込まれそうになったが、慌てて現実に戻る。

「も、もう、早く行くよっ!」
 赤く染まった顔をして言うと、また笑い声が聞こえてきた。

 クレハが耳打ちする。
「ナツメはよくいじられるけど、結構ドSなんだよなー。
 あの様子じゃ、ツバキのこと相当気に入ったぞ」

「そ、そっかぁ…」
 やれやれ、とため息をつきながらも、私の頬は自然と緩んでいた。