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Re: 魔法使いの青春理論 ( No.27 )
日時: 2014/03/07 11:35
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)

   【第二章 お花見—flower viewing—】



  10.しりとり


 ギルド設立から約一か月。
 もうすっかり暖かくなり、桜が満開に咲いた。

 …という訳で、私たちは桜の名所である公園へお花見しに来ていた。

 シートに作ってきた料理を並べ、桜を眺めていると、
「なぁ、しりとりしようぜ!」
 とクレハが言った。

「なんでしりとり?」
「さっき子どもがやってるのを見たらやりたくなったから!」

 お花見でしりとり…全く関連性はないが、異論はないのでやることにした。
 順番は、私、ユリ、クレハ、ナツメ、トウの順だ。

「じゃあ始めるよ。しりとり」
「リトル」
「る、かぁ…ここはかっこよく、ルシフェル!」
「じゃあ僕は真面目ぶって…類は友を呼ぶ」
「…豚」(豚肉の生姜焼きを見ながら)

 ここまでは普通だった。
 でもいるよね、変な単語を連呼する奴。

「タイマー」
「まる」
「また『る』かぁ…流浪の民!」
「水清ければ魚棲まず」
「スフレ」(スフレを見ながら)

「あ、食べる?スフレ」
「…食べたくて言った訳じゃないんだが」
 眉をひそめるトウ。なんだ、食べたくて言ったのだと思ったよ。

「スフレだから…歴史!」
「知る」

「また『る』!?ユリわざとだよね!?」
「いえ、偶然ですよ?」
「くっ…る…うーん…ルビーの炎」

「クレハ、その単語結構痛いよ!?」
「い、いいんだ!格好よければ!」
「かっこいいかな…?うーんと、老いては子に従え」

「エビ」
 目線の先にはやはりエビが。

「はい、エビ」
「だから食べたくて言った訳じゃ…」
 言いながらも、トウは私が差し出したエビを受け取った。

 続いて四巡目だ。
「び…ビーズ!」

「ズル」

「うわあああわざとだよねユリ!?わざとだよね!?」
「いいえ?」

「うぐっ…る、瑠璃色の湖!」

「痛っ」「痛っ」「痛いです」
「ユリ、お前が言うな!」

「み、かぁ…」
「ナツメ、次はどんなことわざ?」

「『耳朶にテントウムシがついてるよ、ツバキ』」

「っひゃ!?」
 私は慌てて耳朶を払ったが、何もついてなかった。
「もーついてないじゃん!」
「くくっ…相変わらずいい反応だね。はい次トウ、『き』ね」
「しりとりでからかわないでよぅ」

 トウは少しだけ視線を彷徨わせて…
「きゅうり」(きゅうりの浅漬けを見ながら)

「やっぱり食べたいから言ってるんでしょ。もー素直に言ってよ」
「ち、違う!たまたま目についたのを言ってるんだ!」
「そ、そうなの…?」

 五巡目に突入。なんかもう誰が何て言うか目に見えてるよ。
「えっと、『り』ね。理科」


「刈る」


「もう分かっていたさああああああ『涙腺崩壊』いいい!!」

「ユリ…意外と手強いね…」
「ありがとうございます、ご主人様」
「オレに対してのツッコミはなしなの!?ねえ!?」

「『いい特訓になったじゃん、クレハ』はいトウ、次『は』ね」
「しりとりで慰められちゃったよ!?」

 トウは、今度は一点だけを見つめ…



「春巻き…が食べたい」



「結局食べたかったんじゃん!!」
「今のは偶然食べたかったんだ!前のは違う!!」

 桜を眺めるのもそこそこに、私たちはぎゃあぎゃあ騒いでいた。