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Re: 魔法使いの青春理論 ( No.44 )
日時: 2014/03/15 12:51
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)

  12.風月の鳥 後半


「アオバって結構いい奴だったなー」
「…ただの苦労人に見えるが」
「そりゃあ苦労するでしょ。あんなに騒がしい女の子たちに囲まれてさ」

 アオバのギルド『風月の鳥』から帰宅した三人は、
 メンバーの話で盛り上がっていた。

 私はさっきアオバに耳打ちされたことを思い出し、三人の会話の中に入った。

「三人とも、聞いてもらいたいことがあるの」
 何?と首を傾げる彼らに、私はアオバの秘密を告げた。


「実はね、アオバは吸血鬼の力を持っているの」


 その突拍子な内容に、三人はしばらくぽかんとしていた。
 彼らが理解するのを待ってから、私はアオバの力について説明した。


 アオバは半年ほど前、テリトリーである洞窟で、太古の吸血鬼が
 封印されている器を偶然見つけ、触れてしまったことで、
 その吸血鬼の力を得てしまったのだ。

 その力は、異性の血を取り入れると魔力が高まり、
 強力な魔法が使えるというものだった。


 完全に理解したクレハたちは、ただただ「すげー…」と呟いていた。

「でも、そんな重大なことを僕らに明かしてよかったの?」
「アオバに言われたの。『俺の秘密をクレハたちに話してくれ』って。
 もちろんユリも知ってるよ。でも、他の誰にも教えないでね?」

 おっけー、という返事を聞きながら、私はもう一つの秘密を
 自然と思い浮かべていた。

 これはユリさえ知らない、少女たちの秘密——。


  + + +


 半年前、アオバは私だけを呼び出し、吸血鬼の力を得たことを明かした。
 クレハたちのように驚く私に、アオバはさらに教えた。

「一昨日、得体の知れない団体が俺のもとに現れたんだ。
 襲うのかと思いきや、奴らは『女じゃなきゃ意味ない』とか言って去っていった。

 その言葉がどうも気にかかって、俺は奴らの情報を集めた。
 そしたら、こんなことが分かったんだ。

 あいつらは人外の力を持つ女性を追い求めているらしい。

 何のために狙っているのかは一切不明だが、
 俺と同じ立場の女性が危険な状態にある。
 そう考えた途端、なぜか分からないけど、一心にこう思ったんだ。

 ——彼女たちを守らなければ、って」

 そしてアオバは、狙われている三人の女性に、奇跡的に出会えた。
 彼女たちを守ることを約束して、ギルドメンバーとなってもらったのだ。

 "悪魔"の力を持つサクラ、
 "鬼"の力を持つモモ、
 "セイレーン"の力を持つスズラン。

 これらの"人外能力者"の少女に。


  + + +


 サクラたちは、基本的にアオバを尻に敷いているけど、
 何だかんだ言ってアオバのことを一心に想っているのだ。

 あいつは、自分の信念だけは絶対に曲げない奴だからなぁ。