コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔法使いの青春理論【只今短編】 ( No.52 )
- 日時: 2014/03/16 12:00
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: jZi4txmM)
15.禁句
ある夜、僕——ナツメは、トウの部屋を訪れていた。
「トウ、一緒に依頼をこなしてほしいんだけどいいかな?
空き倉庫にたまるヤンキーたちの駆除なんだけど」
「…ああ、構わない」
「ありがと!じゃ、決行は明日ね」
というわけで翌日。
僕とトウは依頼人である空き倉庫の管理人のもとを訪れていた。
ハゲ…いや、少ーし頭が薄い管理人は、僕たちを現場に案内してくれた。
「こ…ここです。今もちょうどたまっています…」
「了解です。行こう、トウ」
「ああ」
槍を召喚したトウと共に、倉庫へ乗り込んだ。
そこには十人ほどのチンピラが居座っていた。
うわぁ女までいるよ。
「君たち、ここから出ていってくれないかな」
突如その場に現れた僕たちに、ヤンキーたちはきょとんとしていたが、
やがてゲラゲラと笑い出した。
——イラッ。
「言うことを聞かないと痛い目に遭わせちゃうよ?」
「速やかに去ったほうが身のためだ」
わざと棘のある声で言うと、それでも笑みを浮かべる
一人の金髪のヤンキーが歩み寄ってきた。
「うっせーなァ、ヤル気かよ?てめーらこそでてけよ、偉いコちゃん?」
「…口だけじゃ致し方ないな」
トウはぼそっと呟くと、詠唱した。
「ボルトウェーブ」
槍の柄の先端をコツンと地面に当てる。
すると、そこから電気の波が広がり、金髪ヤンキーを感電させた。
「ぎゃああああ!——って、てめぇら、やっちまえ!」
それを合図に、ヤンキーたちは一斉に立ち上がった。
「うおおおおおっ!!」
全員が魔法を使おうとしているのを見て、僕は嘆息をもらして言った。
「仕方ないね。本当に痛い目に遭わせちゃおうか、トウ」
「分かった」
手に魔力を込める。
そして、風魔法の基礎である風の刃を生み出し、放った。
「ぐはぁっ」
頼りなく吹っ飛ぶヤンキー。
まったく、弱すぎだよ。
トウも槍でヤンキーを倒している。
魔法を使わずとも、武器のみで処分できていた。
残るはあと三人。
次々と仲間が倒されていくヤンキーが、苛立ちと焦りが混ざったように言った。
「くそっ、こんなチビにやられて堪っかよ!」
——ブチッ。
んんん?
今、なんて言ったのかな?
「君、今チビって言ったね?」
「それがなんだよチービ!」
瞬間、僕は右手を天に向かって挙げて唱えた。
「エンゲージドシルフ!」
魔力が高まり、風がその場でごうごうと吹き荒れ始める。
今更青い顔をするヤンキーたちを笑顔で睨みつけ、とどめの呪文を唱えた。
「洗濯物の気持ちにさせてあげるよ——ツイスターバースト!」
挙げていた右手を振り下ろす。
途端、発生した竜巻に、残りのヤンキーたちが巻き込まれた。
「ぎゃ————!!」
「あっははは!そんなにはしゃいでくれるなんて嬉しいよ!」
ごめんなさい出してえええ、という悲鳴を聞きながら、
倒れているヤンキーたちに笑顔で言った。
「さぁ、早く出て行って。それとも…」
竜巻を指差す。
「あの中にぶちこまれたい?」
「ゴッ、ゴメンナサアアアアイ!!」
土下座したヤンキーたちに、竜巻の中にいた仲間を解放すると、
疾風の如く走り去っていった。
「うはー、スッキリした♪」
「…ナツメのSっぷりには頭が上がらんな」
真面目な顔に苦笑いを浮かべて、トウが呟いた。