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- Re: 魔法使いの青春理論 ( No.55 )
- 日時: 2014/03/20 20:59
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: Z6SnwTyI)
17.紅葉色チャイルドフッド
田舎の小さい村に生まれたオレは、いたって普通だが恵まれた家庭で育った。
ただ一つ寂しかったのは兄弟がいないことだった。
そのため、オレはよく外へ出て近所の子どもと遊んでいた。
どんなことをして遊んでいたか?
えーっと、ヒーローとか強い魔法使いに憧れていたから
その"ごっこ遊び"だったな。
そんなある日——五歳の頃、いつものように遊びに行こうと外へ出た直後、
隣の家の玄関に見かけたことのない子どもがいるのに気付いた。
年齢もオレと同じくらいだろう、そう思うと自然と親近感が湧いてきて、
オレはその少年に話しかけていた。
「なぁ、いっしょに遊ぼーぜ!」
しかし、少年は首を振った。
無表情だったが、その動作から、なんとなく悲しさが伝わってきた。
その様子を見て、オレはこう考えた。
——この子には何か悲しいことがあったんだ。
悲しみは遊んで忘れるのが一番だろ、ってな。
だから、オレは少年の手を握って言った。
「オレが絶対に楽しませてやるから!」
お構い無しに手を引っ張って公園へ行き、友達の中に少年を交えて
日が暮れるまではしゃいでいた。
少年は、最初は戸惑っていたが、オレらと接しているうちに
だんだんと笑顔を浮かべてきた。
「そういえば、おまえ何て名前なんだ?聞くのわすれてた」
「えっ…ト、トウだけど」
「トウっていうのかぁ。オレはクレハ!なぁ、また明日も遊ぼうぜ!」
「…!う、うん…!」
これが、トウとの付き合いの始まりであり、
トウが初めて他人に心を開いた瞬間だった。
+ + +
「なるほど、クレハのフレンドリーさは昔から変わらないんだね」
私がそう言うと、クレハは「まあな!あははは」と笑った。
それにしても、一つ気になることがある。
「トウが初めて心を開いた…ってどういうこと?」
尋ねると、トウは顔を赤くして頬を掻いた。
「その…色々あったんだ」
その横で、いつもより穏やかに微笑みながらクレハが言った。
「トウ、話してやってくれよ。ツバキはオレたちの仲間なんだから」
トウは「…クレハがそう言うなら…」と呟いて、少し照れながら話し始めた。
*チャイルドフッド(childhood):子供時代