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Re: 魔法使いの青春理論【略して“まほ論“】 ( No.72 )
日時: 2014/03/30 14:15
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: ozdpvABs)

  23.百花繚乱プレゼント


 ご主人様をベッドに寝かせながら、私は思い出す。
 この方に助けられたときのことを。

 私の生活がこんなにも鮮やかに色づいているのは、
 旦那様たちを失った自分を助けてくれたご主人様のお陰だ。
 スギノ家の旦那様とは違う優しさを、この方は持っている。

 今はこの日々を楽しむことにしよう。
 それが、ご主人様への一番のお礼だと思うのだ。



 自室で着替えながら、僕は考える。
 あの時、僕がもっと強かったら、あんなことにはならなかっただろうか。

 …いや、考えるのはやめよう。
 過去は過去、今は今だ。
 あの悔しさを未来に繋げないようにすることが、今は重要なんだ。

 なんて思っていると、隣の部屋からドシンという音が聞こえた。



 ベッドから転げ落ちた衝撃で目を覚まし、俺は想う。
 このギルドに入ってよかったと。

 ツバキはすげー親切なリーダーだし、ユリも人想いだし、
 親友というより兄弟のような存在のナツメとトウも、
 このギルドに入ってから、今まで以上に明るくなった。

 よし、明日も目一杯楽しんでやろう。



 一人ソファに腰掛け、俺は呼び起こす。
 さっきナツメに言われたことと、胸の高鳴りを。

 ナツメは「トウはツバキに恋をしている」と断定していたものの、
 俺自身、まだ自覚はない。
 自覚はないけど…

 もっとツバキのことを知りたい。



 変なねぐせを立てた私は、全速力で食堂に転がりこんだ。
「ふぁぁごめん!気が付いたら寝ちゃってて…
 ユリ、夕食の手伝いできなくてごめん!」

 そんな私に、ユリはクスリと笑った。
「ご心配なく。クレハさんたちに手伝ってもらいましたから」

「おっはーツバキ!さ、食おうぜ!」
「その前に顔洗ったほうがいいかもよ?」
「うん、そうする」

 ナツメに言われ洗面所へ。
 すると、そこからちょうどトウが出てきた。

「あ、トウ」
「〜〜〜〜〜っ!!」
 私を見るなり、トウは硬直した。

「どうしたの?」
「——っな、なんでもない。早く顔洗え」

 そう言って、トウは早足に去っていった。
 その顔が少し赤かった気がするけど…気のせいかな?

 まぁどっちにせよ、普段なら一言しか返さないタイプだから、
 今日はもう一言添えてくれて、なんだか嬉しい。

 ——さて、早く顔を洗って、皆が待つ食堂に急ごう。



      *プレゼント(present):現在