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- Re: 魔法使いの青春理論【略して“まほ論“】 ( No.80 )
- 日時: 2014/04/03 18:06
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: bHw0a2RH)
25.
依頼状を持ってきてから三日経った真夜中。
私たちは今まさにカシワギ邸に潜入しようとしていた。
私とユリは飛行魔法で、男三人はユリに運ばれ、屋敷の屋根へ登る。
そこには人が通れるくらいの広さの換気口があった。
事前調査で発見したのだ。
そこからは全員口をつぐみ、換気口の金網を慎重にはずす。
スズランのような音の魔法使いがいれば、どんな物音も消してくれるのだが、
無い物ねだりをしても仕方がない。
金網を外し終え、私、ユリクレハ、ナツメ、トウの順番で中に侵入する。
換気通路は緩やかに傾いているものの滑りにくいのが都合よかった。
音をたてないように進んでいき…出口に辿り着いた。
再び金網を外し、換気通路から出る。
そこは、淡いランプが点々と灯っている、薄暗い廊下だった。
深夜だということもあってか人気はない。
全員出てきたのを確認し、次の換気口へ向かう。
(よし、このままうまくいける——)
突然、廊下が明るくなった。
そして、私たちの前に、メイド服を着た一人の女が現れた。
「はぇ?」
思わずマヌケな声を出してしまう。
メイドはぽかんとしていたが、間もなく驚きに満ちた表情をした。
「し、侵入者…!侵入者発見!!」
彼女はそう叫ぶと、懐からブザーを取り出し、そのボタンを押した。
ビビビビビ!と耳をつんざくような音が鳴り響く。
その音を聞いて、私たちはようやく現状を理解した。
「にっ、逃げろ———!!」
まわれ右をして全速力で駆け出した。
「なんだこれえええ!あっさりすぎだろオオオオオ!!」
ナツメのツッコミに大いに共感する。
まさかこんなあっさり終わってしまうとは…。
…いやいやまだ終わってなんかない。
見つかってしまったら思いっきり大暴れして悪事を暴くって作戦じゃないか。
そう思っていると、前方に大きな扉が見えた。
「とっとりあえずあそこに入るわよ!」
「うえええ入んの!?」
「入るのっ!突撃!」
そう叫び、私は扉を思いっきり押した。
ギイイイ——と扉が開く。
そこには…
「ようこそ我が家へ。今日のゲストは随分若いね」
スラリとした長身にオールバックの黒髪。
紫色の瞳は眼鏡越しでも妖艶さを醸し出している。
この男が、商業会のトップに立つ豪商、カシワギ—柏木—だ。
彼のオーラに圧倒されながらも、私は正々堂々と告げてやった。
「私たちはギルド百花繚乱!あなたの悪事を暴きに来ました!」
後ろから「って言っちゃうの!?」「うぉーツバキかっけえええ!」等の
言葉が聞こえたが、今は気にしないでおこう。
するとカシワギは笑いながらこう言った、
「はははっ、君たちが新たな挑戦者か。まあ探してみるといいさ。ただ——」
カシワギの眼鏡が勝ち気に輝いた——ような気がした。
「果たしてこの屋敷から出られるかな?」
次の瞬間、私の目の前に、天井から落ちてきた槍が突き刺さった。
「っひゃ!?」
心臓が止まりかけながらも上を見る。
すると、高い天井には数本の縄が張られており、
そこに数人の使用人が立っていた。
使用人たちは揃って武器を召喚し、一斉に放ってきた。
「こいつら全員武器使いか…!」
いつの間にか剣を召喚したトウが、降り注ぐ武器を弾く。
私たちもそれらをよけ、魔法を使おうとするが、
武器は止めどなく放たれてきる。
「くっ、キリがねえ!」
クレハの言う通り、魔法を使うタイミングが掴めず、
よけるのに精一杯だ。
よけて、魔法を使おうとして、でも出来なくて、またよけて…
それを繰り返しているうちに、私たちははぐれてしまっていた。