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Re: 魔法使いの青春理論【ひたすらバトル】 ( No.85 )
日時: 2014/04/07 21:04
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: Y4EbjjKp)

  28.


 俺——トウは、クレハと一緒に、大広間にいた使用人たちに追われていた。

「トウ、こっちだ!」
 角を曲がると、少し前を走っているクレハが、
 開きっぱなしにしてある扉の陰に身を潜めた。
 俺も後に続く。

 使用人たちは隠れたことに気付かなかったようで、通りすぎていった。

「はぁ、ここの使用人はしつこいな…」
 ため息混じりにクレハが呟く。
 それに頷くも、俺の頭の中はあいつのことでいっぱいだった。

 ツバキのことだ。

 俺は運良くクレハと逃げられたが、ツバキたち三人は一人でいる可能性が高い。
 もしツバキが危険な目に遭っていたら…そう考えると、不安で緊張してしまう。
 …どうか無事でいてくれ。

「なぁ、トウ」
 クレハの声に振り向くと、彼は訝しそうな表情をして続けた。

「この部屋、なんか怪しくないか?この扉、よく見たら鉄の扉だし、
 かなり奥までありそうだし」

 確かに、扉は簡単には壊せそうにない頑丈なつくりをしている。
 …そんな扉が何故開いているのか気になるが。

「そうだな…捜索してみるか」
「おう」

 とりあえず部屋の奥まで進むことにする。
「…物とか何もないな」
「ああ、部屋というよりはただの廊下のようだな…ん?」

 クレハが部屋の最奥を指差した。
「あそこにドアがある」

 駆け寄ると、そこには南京錠のかかった黒い扉があった。
 部屋のさらに奥へとつながるようだ。

「やっぱ鍵がかかっているな」
「…それなら問題ない」

 俺は扉の目の前に立ち、細長い針を召喚した。
 その先端を鍵穴に突っ込み、カチャカチャと探る。
 程なくしてカチンと音がなり、鍵が開いた。

「そっか、トウは泥棒出来るんだったな!久し振りに見たぜ」
「…確かに泥棒技だがピッキングって言え」

 自分では言いづらいが、俺は"ピッキングの達人"と呼ばれた男である。
 小さいとき…母親に外出を認められなかった頃、一人遊びとして
 自宅のドアで練習していたのだ。
 一人遊びがピッキング…今考えると、とんでもない子供時代を過ごしたものだ。

 重いドアをギィ…と開け、中を覗く。
 薄暗い空間は、さらに奥へと続いていた。

「これじゃあ暗すぎるな」
 クレハが手のひらに火の玉を出し、闇を照らす。
 俺たちは先へ進んだ。

 そこは静まりかえっていて、俺たちの靴音以外は何も聞こえない。

「この先には何があるんだろうな」
「ペットモンスターとかじゃなきゃいいけど…」
 二人で会話をして、不安を紛らわしていると、

「なんだあれ…鉄格子?」
 火の玉に照らされて、鉄格子が見えたのだ。
 俺とクレハは走り寄って、そして——


「な…なんだよこれ…!?」

「麻薬…!?」


 鉄格子の向こうにあったのは、大量の麻薬だった。

 八畳くらいの空間に、ところ狭しと、大量の麻薬が陳列されている。
 種類も半端じゃない。
 こんなに多種で大量の麻薬を保管しているってことは…

「つまり…カシワギは麻薬の売買をしている、ってことか…!?」

 クレハが呟いた——
 その時だった。


 突如、浮遊感に襲われた。


 すぐさま下を見ると、俺たちが立っている床が消えていた。

 声を上げる間もなく、俺とクレハは下に落ちていった。