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Re: 魔法使いの青春理論【ひたすらバトル】 ( No.89 )
日時: 2014/04/12 15:22
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)

  30,


 背中に突然攻撃を受け倒れこむトウ。
 今までオレ——クレハと戦っていたのに、いきなりトウを攻撃した運転手。

 二人のその姿に呆然としていたオレだが、やがて怒りを覚え叫んでいた。
「てめぇ、トウに何しやがる!お前の相手はオレだろうが!」

 すると、遠巻きに見ていた審判が嘲笑うかのように言った。
「このバトルは一対一であるとは言ってませんヨー?
 それを知らずに気を抜いた彼が悪いのデス」

 ぶちっ、と堪忍袋の緒が切れる音がした。

「このっ…!」
 オレは右手を天に掲げた。強い魔法を使う際の体勢だ。

「コネクト・サラマンダー!」
 火の精霊の名を唱える。そして、

「汝を包むはあかの戦慄——灼熱業火!!」

 生み出した赤々と燃える炎は、運転手の全身を覆った。
 続けて魔法を容赦なく放つ。

「フレイムランプ!」
 正面に突き出した手の前に魔法陣を召喚し、そこから火の球を繰り出す。

 そのいくつかを、メイド長が水魔法で消した。
 そこを狙って、

「だああああああっ!」
 トウが銃を撃った。

 土煙が舞い、相手の姿が見えなくなる。

「やったか…!?」
 やがて収まり始める土煙の向こうに見えた運転手の姿に…
 オレは目を見開いた。

 あの強烈な業火を正面から受けたというのに、
 運転手は服を少し焦がしただけで平然としていた。

「そんな…!」
 茫然自失するオレの耳に、審判の声が届く。

「彼は攻撃を受けたその時、瞬間的治癒魔法を使ったのデス。
 さぁ〜て、そろそろ反撃する時間ですヨ〜!」

 審判が言い終わる前に、運転手の両手が発光する。
「光の剣」
 両手から、直視できないほど眩しい光の剣が出現した。

 その光景を理解した時には、オレは光の剣によって吹っ飛ばされていた。

「ぐはっ!」
 冷たい床の上を転がる。

「うっ…痛ってぇ…」
 駄目だ、動けない…!

 光の剣を受けたところに手を当てると、ぬるりとした感触があった。
 ——血だ。

 魔法使いの身体は、魔力に対しては頑丈に出来ているため、
 魔法を受けて出血することはそんなにない。
 それなのに…たった一撃でこれほどの威力が…

 と、その時、メイド長の声が響いた。

「アクアドリル」

 続けて、バシャッと水が跳ねる音。
 そして…

 オレの数メートル後ろの壁に、トウが激突した。

「トウ!!」
 霞む視界で見ると、トウは仰向けで倒れたまま動かなかった。

「オヤ、武器使いクンは完全に気絶していますネ。
 火の魔法使いクンも動けなそうだし…」
 審判が楽しそうに告げた。


「この勝負、ゲストの負け〜!」


 すると、メイド長と運転手が、懐から手錠を
 取り出して、オレたちに近付いてきた。

 逃げ出そうとしても動けない。
 逆に、意識が朦朧とし始める。

 捕まるしかないのか…!?




「待て!」




 不意に、聞き馴染んだ声がした。

 その声の主は、オレとトウが落ちてきたのと同じ穴から姿を現した。
 彼はオレたちの前に立ち塞がるのを、霞んでいく目で捉える。


「次の相手は僕だ!これ以上、クレハとトウには手を出させない!!」


 ナツメのその言葉を最後に聞き、オレは意識を手放した。