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Re: 魔法使いの青春理論【ひたすらバトル】 ( No.95 )
日時: 2014/04/19 15:03
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)

  32.


「…っ、ここは…?」
 私を包んでいた光が晴れた。

 転送されたのは、大広間ほどの広い部屋だった。
 そしてそこには…

「ここに転送されたってことは、あの部屋に入っちゃったのね?」
 そう言って近寄ってくる、一人の赤毛の女性。

 それと、私を囲んで立つ、大人数の使用人たちだった。

 使用人たちの一歩前に出て、女性は赤毛をいじりながら続ける。
「ダンナの秘密の部屋に入ったからには、それなりのお仕置きが必要ね」
 この女性、どうやらカシワギの奥さんのようだ。

 私はさっきの衝撃的な光景を思い出しながら問う。
「あそこにいた人々は一体…?」

「やっぱり気になるわよね。じゃあ…特別に話してあげる」
 カシワギ夫人はそう言うと、私たちと使用人の間に結界を張った。

「…防音の結界ですか」
「ええ、すべての使用人にこのことを明かすわけにはいかないもの」
 妖艶に微笑む夫人。

「彼らは麻薬の被験体よ」

「なっ…!?」
 本日何回目かの衝撃を受けた。

「夫の裏の顔は麻薬カルテルの総帥なの。そして麻薬の実験も行っている。
 ここに侵入してきた人間を捕えては、彼らを実験台にしているのよ」

「そんな…ことを…!?」
 あまりの残虐さに目を見開いていると、夫人が結界を解いて腕を広げた。

「つまり、あなたも被験体となるってことよ!
 この場にいる使用人は五十人…用がある者を除くすべての使用人よ!
 さぁ、おとなしく捕まりなさい!」

 言い終わると同時に使用人たちが一斉に襲いかかってきた。

「うおおおおおおおおおおお!!」
 ドタドタと騒がしいいくつもの足音、魔力を発動させるいくつもの気配。

 それらを前にしても、私は動かず、俯いていた。

「…人をあんな酷く扱うことが」
 胸の内を占めるのは、驚き、動揺、そして、


「許されると思っているんですか!!」


 怒りを露にして、私は手前の使用人を何人か蹴り飛ばした。
 彼らに巻き込まれ、数人が吹っ飛び、少しスペースができる。
 私はそこで逆立ちの体勢を作り、

「ワルキューレの行進!」

 そのままブレイクダンスのように動き、使用人たちに突っ込んだ。
 途端に魔力の渦ができ、私に少しでも触れた者を遠くへ蹴散らす!

「うわあっ!」
「なっ、なんだよこの女!」

 そんな声が聞こえたため、動きを止めた私は体勢を戻して答えた。




「素敵なご主人様に慕うメイドです——以後お見知り置きを」




 強気な笑みを浮かべて、私は彼らにナイフを放った。