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Re: 舞えし蝶は暗闇に散る・゜・。・゜゜・* ( No.21 )
日時: 2014/03/16 14:48
名前: 珠紀 (ID: F08K/Z64)

永いながい夢を見ていた。

孤独な少女は呟く。

『寂しい』……と






「姫百合」

凛とした優しい声に夢から起こされる。

目を開けると、目の前には男の人の顔。

「翠蓮…!?」

慌てて起き上がろうとすると、それを制される。

「私の顔を見てその反応とは…傷つきますねえ」

スイレンはわざとらしく『傷ついた』と胸を痛めた素振りをする。

…あれから10年の月日が経ち、17歳となったわたし。

あの時、傷だらけのわたしを拾ってくれたのはスイレンだった。

「…早く起きてくれませんか、2人共」

溜息と共に発せられた言葉が頭上から降ってくる。

「お前も空気が読めん奴だ、空火。それも姫百合の寝起きを見るなど100年早いわ」

「………」

『クウカ』

彼はわたしがここに来た時からいた男の子だった。

わたしと同じでここに居候させてもらっている身である。

そして、幼馴染でありスイレンにわたしの護りを命じられている。

「食事の準備ができましたので…早くいらしてください翠蓮さん」

「あ〜はいはい。着替えたら姫百合も来てください」

面倒くさそうに立ち上がったスイレンはチラチラとわたしとクウカを見ながら部屋を出た。

「…翠蓮さんの敬語、直らんな」

「…う、うん」

スイレンはわたしに対してだけ何故か敬語だ。

スイレン曰く『私にとって姫百合は姫さんだから』だそうだ。

「…………」

それにしても…

「ねぇ、空火」

「な、何だ」

「……どうしてわたしの方を向かないの?」

さっきからわざと顔を逸らしわたしの方を見ようとしていない。

「な、何でもない。気にするな…早く着替えてあんたも来い」

「あっ…ちょっっ……!?」

急いで立ち上がったせいか寝着の裾を踏んでしまい体勢が崩れる。

顔面直撃を覚悟したが、いつまで経っても痛みがない。

というより、暖かい?

「怪我、してないか」

耳元で言われゾクゾクっと鳥肌が立った。

わたしとは違う大きい身体と低い声に男の人に抱かれているのだと実感する。

「あ、大丈夫大丈夫!ありがとね、空火」

急いでクウカから身体を引き剥がし、後ろを向く。

バクバクとなった心臓の音がクウカに分かってしまいそうなほど鳴っていた。

「そうか、では俺は翠蓮さんのところに行く。あまり遅いとあんたを独占していたと怒られるからな」

「あ、うん。わたしも急いでいくね」

ふと、障子に手をかけたところでクウカの動きが止まる。

「……空…」

「俺に対して女の顔をするな」

聞こえるか聞こえないかの声だがわたしにはハッキリと聞こえた。

部屋から出て行ったクウカの背中を見つめ、わたしは抱き締められた自分の肩をそっと触った——