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Re: 白銀の小鳥 Form of the love【短編集】 ( No.10 )
日時: 2014/03/11 20:04
名前: あんず ◆zaJDvpDzf6 (ID: iLRtPlK2)


《本編》
Episode2 美しい世界の最期に


こんにちは。
今、紅茶が入れたてなんですよ。

カチャリと静かにカップを二つ。
お砂糖はほどほどに。

椅子に座ってくださいな。

本日の物語は、終末のお話です。
今日、世界が滅ぶなら。
あなたは何をしますか?

「美しい世界の最期に」
それでは始まり、始まり。

    ──‥*※*‥──

ただ走った。
走って、走って、走って──
転びかけて、足を捻っても走り続ける。

死にたくない、死にたくない。
ただそれだけを思っていた。

何から逃げているのかも分からない。
もう全部全部、分からない。

何故こうなっているのか。
何故誰もいないのか。

知らない。怖い。
涙が勝手に頬を伝った。

朝起きたらこうだったのだ。
壊れそうなテレビから人の声が聞こえた。

“世界が滅びます。”ってさ。
馬鹿みたい。ほんと、馬鹿みたい。
それが真実なのが一番馬鹿みたい。

お母さんもお父さんもいなかった。
遠くで人の叫び声が時折聞こえるだけ。

朝だというのに空は黒かった。
星がとても綺麗に見えた。
まるで「空」という蓋がなくなって、
宇宙が丸見えになっているみたいな。

鳥の鳴き声がよく聞こえた。
それはまるで世界を哀れむような、
自らの死を悲しんでるように聞こえた。

どれくらい走っただろう。
既に太陽は傾きかけていた。
空が真っ黒なのに太陽が出ている、矛盾した光景。
しかしそれは息を飲むほどに美しかった。

ふと足元の小石につまずく。
力が入らない体はそのまま横たわるように倒れた。

体を回転させ、仰向けになる。
夕日なのか何なのか、空は黒と紅が混ざっていた。

東の空は真っ黒に塗り潰されている。
西の空は紅が広がっていた。

あぁ、これが世界か。
これが本当の宇宙か。
今まで人間が見、聞いていたものは
なんとちっぽけだったのだろう。

それは残酷で、恐怖の塊のような光景。
なのに目を離せない。
本当に、息を飲むほどに美しい。

“世界”を前にしたら、
私なんて石ころにも満たないのだと思い知った。

もう体力はなかった。
逃げようとも思わなかった。
きっとそれは意味のないことだろう。

あれほどまでに心にあった「死にたくない」という
強い思いも、今ではすっかり消えていた。

鳥が鳴く。
悲しそうな声で。

それを聞きながら、意識は遠くなる。
ここはとても寒くて寂しい。

──星が、とてもきれいだ。

    ──‥*※*‥──

「悲壮美はもっとも
 
 感動的な美しさにみちている。」

悲しくも美しい世界の終末、彼女は何を思ったでしょう。
感動的で圧倒的な“何か”を前にしたとき、
人はどう行動するのでしょう。

あなたは今日、世界が滅ぶなら何をしますか?

それでは本日はここまで。
また次回、お会いしましょう。

《引用:エドモンド・バーク》

    ──‥*※*‥──

どうしよう…。
なんか完全にコメディライトじゃない…。
はい、次回から!また明るくします!

でわでわ。