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- Re: _ほしふるまち 【短編集】 ( No.56 )
- 日時: 2015/03/17 19:27
- 名前: 村雨 ◆nRqo9c/.Kg (ID: SiiKM6TV)
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その時、彼女が急に僕のほうに向き直った。
「あのっ…………今まで嘘吐いててごめんなさい!」
────パードゥン?
言われている意味が飲み込めずに足が止まった。同時に頭が上手く回らなくなる。アーユーオッケー? ノー、アイムノット! それはどういう意味ですかね?
他の通行人の邪魔にならないように思考停止中の僕を歩道の脇まで引っ張って行った後、彼女は口を開いた。
「私の小学校のときの友達に、橋岡理乃っていう子がいるんだけど」
相変わらず事態が飲み込めない僕は、とりあえず大人しく話を聞くほかない。
「その子ね、小学校卒業と同時に引っ越しちゃって──連絡先とか全然知らないからもうどうしようもないかなって、諦めてたの。でもこの前、その子が、確か渋沢くんと幼馴染だって言ってたことを思い出して、」
ちんぷんかんぷん。謎は深まるばかりだ。
「し、渋沢?」
「そう! 青柳くん、渋沢くんと凄く仲良いでしょ」
「仲良いっていうか……ただの腐れ縁だけど」
「だから、もし青柳くんと知り合いになれたら……渋沢君とも話せて、理乃の連絡先も聞けるかもって思って……。でも全然接点とかないから…………告白するのが一番手っ取り早いかなって。ごめんね! 青柳くんにはいつか本当のこと言わなくちゃって、分かってたんだけど」
「で、でもそれって渋沢に直接言えばいいんじゃ……」
「それは……渋沢くんって何考えてるのかよく分からないし、その反面青柳くんは話しかけやすそうだったから……」
ああ、なるほど。僕は親しみやすさで選ばれたってことですかー、はい了解しましたー。
──────って、いやいやいやちょっと待て!
冷静になれ、自分。ひとまず深呼吸をしよう。いち、に、さん。……とりあえず頭の中を整理しようか。目の前にいる憧れの美少女人見唯華は、最初から僕に好意なんてもっていなかった。虚しくも、儚く終わりし、僕の恋。おいおい、今は俳句なんて詠んでる場合じゃないっつうの。素直にショックな気持ちとやっぱりそうかという諦めの気持ちとが交錯して、僕の心をごちゃごちゃとかき乱す。
「やっぱり傷つけちゃったよね」
そうして彼女は僕を見つめた。大きな瞳には涙が浮かんでいる。
その時、傍を通り過ぎた他校の男子三人組に僕はぎろりと睨まれてしまった。冷や汗が背中を流れる。何てめえ女の子(しかもこんな可愛い子)を泣かしてんだよお、とでも言いたげな目だった。────違いますって! 誤解なんですよ! と心の中で訴えたが、それが彼らに伝わるはずもない。
どう返事していいか分からずにしばらく黙っていると、その態度が怒っているように思えたのか、彼女は最後に「本当にごめん」と小さな声で付け足し、そして背を向けた。やばい、このままじゃ僕の恋は完全に再起不能になってしまう──────
「ストップ!!」
彼女は小さな背中をぴくりと震わせて、立ち止まった。僕は続けて言う。
「人見さんの友達のこと! 僕から渋沢に話すよ」
彼女は最初何も言わなかったが、少ししてから震える声で言った。
「本当……に?」
必死だった。何とかして彼女を引き止めておかなければいけないと思った。
「──いやまあ、本当は好意はなかったっていうのは確かに残念だけど──、でも僕は人見さんのこと嫌いになったわけじゃないし」
僕はそこで一呼吸おいた。
「だから、よかったら僕と友達から始めて下さい」
彼女がゆっくりと振り返る。泣きながら、笑っていた。
「青柳くんは、優しすぎるよ」
その言葉に思わず照れ笑いしてしまう。そうだ、僕の恋はこれから再び始まるのだ、きっと。
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明るいお話を書きたいなー、と思ってこれになりました((
青柳くんみたいにテンション高いキャラは個人的に好きなので、また書きたいな(ry