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Re: _ほしふるまち 【短編集】 ( No.7 )
日時: 2014/03/16 16:07
名前: 村雨 ◆nRqo9c/.Kg (ID: IAQru7qe)

 【 Love Letter 】


 部活の帰りに靴箱を開けると、水玉の封筒が入れてあった。

 驚きのあまり一旦靴箱を閉めて、それから冷静に脳みそを回転させる。
────あの女物と思しき封筒、それが帰り際に靴箱に入っていたということは────俺にも春が来たってことか!?

 周囲に人がいないことを確認してから、再び靴箱を開けた。当たり前なのだが、そこにはさっきと同じ水玉の封筒が置いてあった。夢じゃ、ない。

 俺ははやる気持ちを抑えて、手早く鞄の中に手紙をしまう。そうして今までにないほど自転車を飛ばして家に駆け込んだ。親に「ご飯よー」と声を掛けられたが、とりあえず無視して一目散の部屋に向かう。

────深呼吸をして、鞄から手紙を取り出す。急いでしまったためか、封筒の端が折れ曲がってしまっていた。書いてくれた人に申し訳ないと思いつつ、ゆっくりと中身を開ける。

『一目惚れしました。もしよければ、付き合ってください』

 綺麗な字だった。でも時々、書いているときに手が震えたのかと思われる箇所が。そして差出人の名前を見る。七組? 隣のクラスか。だけど、知らない名前だった。


────心臓のバクバクはしばらく収まりそうにない。
 短い文面を繰り返し読みながら、俺はまだ見ぬ差出人を想像してはニヤけていた。




 *




 化学教室に行く途中に君とすれ違って、そして一目惚れをした。
 クラスの友達に名前だけは聞いたけど、君とは全く面識がないから、そこから先はどうしようもなかった。
 同じクラスの女の子で君の友人だという子が一人いて、その子に君のメールアドレスを教えてもらうことも出来たけど、それは結局しなかった。だって、知らない人から突然メールが来たら気持ち悪いと思われるかもしれないから。

────だから、手紙を書くことに決めた。

 学校の帰りに便箋と封筒を買いに行った。ハート柄の派手なものも置いてあった。でもさすがにそんなあからさまなものを選ぶ勇気はなく、シンプルな水玉模様のものにした。

 家に帰っていざ手紙を書こうとすると、どうまとめていいか分からない。誰かに手紙を書くなんて、小学校のときの友達とのお手紙交換以来だと思う。
 君に伝えたいことは沢山あるけれど、そのどれもが浮かんではすぐに儚く消えていった。

 何度か下書きをしてみたけれど、どれもいまいちぴんとこない。
 あ、そういえば男の人ってメールの長文とか苦手な人が多いっていうから、手紙もあまり長ったらしくならないほうがいいのかな。

 そう思って、出来るだけ簡潔に、綺麗な字で手紙を書いた。途中で緊張のあまり手が震えてしまって、何度か書き直した。────君は、この手紙をどんな気持ちで読むのだろう。






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最初の予定より少し長くなりました;
今時ラブレター書く人って少ないですよね((