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Re: _ほしふるまち 【短編集】 ( No.70 )
日時: 2015/05/03 21:16
名前: 村雨 ◆nRqo9c/.Kg (ID: SiiKM6TV)

【 元、彼氏 】



「よお」
「晃一」
「久しぶり」
「三日前に会ったばっかりだけど」
 どうしたのこんな時間に、と私は訊く。玄関にある小型のデジタル時計には「22:37」と表示されている。

「いやさっきまで友達と遊んでたんだけど終電逃して。今晩泊めてくんね?」
「一人暮らしの女子大生の部屋に男が泊まりに来るなんて、常識的に考えてどうなのよ」
「いいじゃん。他に行くところないんだって」
 晃一が顔の前で手を合わせる。野宿でもすれば、と言いかけたところで彼が神妙そうな顔つきになって、私は玄関のチェーンを外した。どうせ最初から追い返す気なんてなかったのだけれど。

 晃一とは去年まで付き合っていた。別れたのは単純に一緒にいることが面倒になったから。私と彼は根本的に分かり合えない種族なのだと、その時思った。
 でも、だからといって仲が悪いというわけでもない。たまにはメール交換もするし、それに今みたいに晃一のほうから私の家に来る事だってある。

「シャワー借りていい?」
「どーぞ」
 浴室に向かう晃一の広い背中を見つめていると、彼に日頃から訊きたいと思っていたことが頭の中に溢れてきた。

本当は、終電は十一時半なんじゃないの。
私の他に親しい女の子はいるの。
今、私のことどう思ってるの。





 けれど晃一がシャワーを浴びて戻ってくると、そんなことは頭から吹き飛んでしまった。

「彩菜、」
 彼が私の名前を呼ぶ。私はふらふらと彼の元に近づいていった。
「何」

 次の瞬間、私の身体は晃一の腕の中にすっぽりと収まっていた。熱い抱擁をされ、とろけそうな接吻を受ける。もう好きでもない人にこんなことをされて、それでもドキドキしてしまうのはどうしてなのだろうか。
 今日はこのまま彼に身を委ねてしまいたい気分だった。私はどうせ拒めない。嫌だなんて、言えない。




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ええ、完全に魔が差したのですorz
描写はあまりくどくならないように気をつけたつもりですが…(