コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Q.日常? A.いいえ、非日常! ( No.1 )
日時: 2014/03/15 14:16
名前: 神崎 ◆GJO87tR.62 (ID: x2W/Uq33)



  prologue



黒く艶やかなロングヘアを風に靡かせた少女、出神真希イズカミマキは、五月の下旬、千森センシン中学へと転校してきた。



       *


「ミズ〜、おはよ〜」
「お、ハヤト。おっす」
ミズ、と呼んで声をかけてきたのは、ハヤトこと、伊澄颯斗イズミハヤト。ミズ、と呼ばれたのは、有栄瑞季アリサカミズキだ。
「あれ、ハヤト、他の奴らどーした?」
「アキとユウ?アイツ等はいつも遅刻魔だろー」
ミズとハヤトは、基本二人で居ることが多かった。
彼らは小学生のころから、周りよりも容姿がいいだの、成績がいいだの、運動ができるだの、とにかく、秀でていた。
そのせいで周りから避けられ、自然、二人でつるむことが多くなっていたのだ。
それはやはり、中学に進学しても同じことで、クラスが同じだった二人は、常に二人で居るようになっていた。
が、つい二週間ほど前のこと、ミズとハヤトの前に、二人の生徒が現れた。
それが、先ほどミズの口から出た、「アキ」と「ユウ」である。
アキとユウ。
確かに、外見はかなり良い方だと言える。現に、アキとユウはモテる。
が、この二人は、絶望的にアホだった。人気はあったのだが。

試験で、下から十番に必ず名前が入っているくらいには。
「ああ、遅刻か。怒られるだけなのになぁ」
「アホだからな、学習しないんだよ」
「なるほど」
二人で顔を見合わせ笑っていると、予鈴が鳴り生徒たちは自分の席へとついた。


       *


担任の教師が教壇に立ち、ぐるりと全員の顔を見渡し、ある一点に視線を止めると呆れたような表情になる。
「…雪笠と藤澤はまた遅刻か?」
雪笠というのはアキ、雪笠明ユキカサアキ、藤澤は、ユウ、藤澤侑斗フジサワユウトのことである。
担任が諦めるほどに、この二人は日常的に遅刻を繰り返していた。
入学してからまだ一ヶ月ほどしか経っていないからいいが、これが一年もほうって置かれるとは思えない。
アキとユウが登校してきたら、取り敢えず忠告しておこう、とおもうミズとハヤトだった。
「まぁ、いい。課題増やすだけだからな。 それよりな、今日は転校生が来てる」
こんな時期に、転校生。
「喜べよ男子、女子で、オマケに美人だ」
教師(男)がソレを言っていいものかと思うが。
男子たちはその言葉にざわめく。確かに、美人と言われたら気にもなるだろう。…ただし、彼女もちのヤツは危険だが。
茜折(アカネオリ(教師))が廊下にでて、すぐに戻ってくる。茜折の後ろには、転校生が静かに着いて歩いていた。
言ったとおり、末恐ろしいほどの美しさだった。可愛い、というよりは、美人。茜折の言葉通りだった。
陰口を叩こうとしていた女子たちは、それすらも出来なくなったのか口を閉じ、男子たちはその美貌に見入っていた。
もちろん、その男子、というくくりの中に、ミズとハヤトも含まれている。
「出神真希です。千葉から来ました。よろしくお願いします」
鋭そうな見た目からは想像のしにくい、人懐こそうな笑顔を浮かべた、転校生、真希。

「うわぁ、超美人」
「周りの女子が霞んで見えるな…」
ミズとハヤトは一応、他の人には聞こえないように話したつもりだったが、近くの男子には聞こえていたようだった。もちろん、女子にも。
軽く脱線するが、ミズとハヤトがアキとユウの二人と居るようになったころから、ミズとハヤトの周りにもちらほらと、友達が集まるようになっていた。
「伊澄と有栄がそこまで言うんだし、やっぱ相当な美人っつーことだよな!」
クラスメートA。
「ちょ、それってあたしら貶してるってこと!?」
クラスメートB。
「あ、いやぁ、そう言う訳では…」
「うん、うん、断じて違う、誓って」
話すことに慣れていない、というか、気の利いた返しというものに慣れていないミズとハヤトからでた言葉は、取り繕いにもならず、さらに息苦しい状況にするだけだった。



       *


中休みになり、ようやく登校してきたアキとユウ。
「よぉっす、ミズ、ハヤト!」
「おーす」
「…お前ら」
「課題、倍にされたぞ、お前ら」
上から、ユウ、アキ、ミズ、ハヤト、である。
ハヤトの言葉に、アキとユウはビクリ、と肩を震わせ、顔面蒼白になっていった。
「へ、へぇえ…?課題?」
「う゛っ…」
それぞれ頭を抱えるだの、絶望的だ、だのと叫ぶ二人を呆れたように見るミズとハヤト。
そんな四人の前に、
「あの、どうも…茜折先生に、あなた方に学校を案内してもらえ、と言われたんですけど…」
転校生、出神真希が登場した。


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